
2月、出所を1週間後に控えたこの日、研究チームはAさんにある試みを行いました。
出所後にAさんを受け入れる施設『ギルドグループ』の三木麻子代表が研究の場に加わりました。
これまでは手紙でやりとりしていましたが、直接話をしてもらうためです。
北海道医療大学・鈴木和助教が話しかけます。
「何か出所後の生活のことで、心配っていうのはありますか」
Aさんは「単純計算ができない。足し算、引き算、掛け算、割り算、全部できない」と困りごとについて話しました。
それについて、ギルドグループ・三木麻子代表が「買い物は必要なときというか、何曜日はお買い物の日って決めていくことはできる、一緒に」と話します。
研究チームが橋渡し役となって、Aさんの性格や苦手なこと、不安に思っていることなどを事前に知ってもらい、社会での居場所作りに役立てることが狙いです。

ギルドグループ・三木麻子代表が「もう絶対刑務所には戻らないぞって。戻らないためにどうやって生活しようって考えていますか」とAさんにたずねると。
「静かにおだやかに。悪いことしない」
「過去、刑務所から出るときに、もうここには戻らないぞって毎回思ってはいたの?」
「思ってはいるのだけれど、こう言ったら語弊があるかもしれないけれど、欲しくなったら取っちゃうぞ、みたいな。ばれないと思って」
「ばれないかもって思っていても、毎回ばれちゃうよね」と三木代表。北海道医療大学・鈴木和助教も「今回も静かに穏やかに悪いことしないで暮らしている中で、ギュってそういう気持ちが動いたらどうするの?」とさらにAさんに問いかけます。
「どうしたらってこっちが聞きたいな。そういう気持ちが湧いてきたら寝る。寝るかテレビをつけて、野球が好きだから野球を見て」
もう塀の中に戻ってこなくても済むように、出所後も対話は続きます。
出所するそのとき札幌刑務所の刑務官がAさんに語りかけました。
「私はもうこの制服を着ているからなかなか外には行けないけれど、せっかくここで会って、社会に出るまでのお話をしたから、研究チームの存在を頭の片隅に置きながら社会で生活してほしいと思います。ここでのつながりが、何かのときに必要になってくるかもしれないから。社会に出てからが本番だから、がんばってください」
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