
「古い車両だから推進力はあまりなくて、現行車両と比べてもスピードは出ないんですが、冬場の走りは本当に力強いんです。だから出番に来るのは主に冬、特にかなり雪が降った日がほとんどですね」と語るのは、函館市企業局交通部・施設課主任の吉田清彦さん。
21歳から32歳まで乗務員を務め、その後現在まで20年以上にわたり整備担当として市電を舞台裏から支えてきた。もちろん、75歳という現役最高齢となった530号のコンディションの隅々まで把握している。他の営業車両と同様に、530号も定期点検を5日に1回行い、各箇所を細かにチェックする月検査、そして自動車でいえば車検にあたる3年に1回の運輸局による検査を経て、現役で走れる状態を維持している。
「530号に関して、一番メンテナンスに気をつかう箇所はブレーキ部分ですね。普通は床下の前後に台車が2つあって、そこに1つずつ、計2つのブレーキシリンダーが付いているんですが、530号は昔の仕様なのでブレーキシリンダーは1つだけ。安全面でいえば、特にここのメンテナンスに気を配っています」

また「530号は冬に強い」という特徴について、吉田さんは車両の重さと、車体とモーターのバランスの良さを理由に挙げる。
「ほかの営業車両の総重量は15トン台ですが、530号は16.5トンあるので力もある。あといまの車両は推進力がある分、駆動が空転しがちなところがありますが、530号は地に足をつけて力強く走る感じ。あくまで推測ですが冬に強いのはそういうところなのかな」。

古さゆえ、当然走らせる上での苦労も多い。特に車両操縦部のコントローラーの重さについては、ほとんどの運転士が苦笑いするほど。
現行車両のコントローラーは530号の半分ほどの長さで、手首の返しだけで操作できるが、こちらは腕全体の力を使って操作しなければならない。特に女性運転士は腕だけでなく全身の力で操作することもあり、一度の運行でかなり体力をつかう車両でもある。
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