
この日、北海道医療大学の鈴木和助教が、気分と体調をたずねると、A受刑者は「非常に悪いです」と答えました。
A受刑者は札幌刑務所で「特別調整」という制度の対象になっています。
高齢や障害がある受刑者で、出所後に住む家や身元を引き受けてくれる家族がいない人を対象に、刑務所にいる間から受け入れてくれる施設を探す制度です。
A受刑者も複数のグループホームの担当者と面接を重ねてきましたが、「金銭管理をされないこと」や「座った状態でもできる仕事があること」などの希望に合う施設がなかなか見つからずにいました。
そして、8回目の当事者研究では、直前に、候補になっていたグループホームに入居を断られ、担当刑務官との面談もうまくいかず、腹を立てていたのです。
A受刑者は「悔しくて涙がぽろっと出てきたよ。悔し涙。それほどひどかったんだ」と話しました。
北海道医療大学の橋本菊次郎教授が「今腹が立っていると思うが、こういうことは今までもあった?」と聞くと、A受刑者はこう明かしました。
「あるなんてもんじゃないよ。1回や2回じゃない。精神が悪化しちゃって、ニョキッとする。鬼みたいな」
そして、過去の経験をこう続けました。
「昔、それで犯罪すれすれのところまでいっちゃったんですよ。包丁握って、グループホームのパートのおばさんを刺してやろうと思って。あまりにもひどいこと言うから『いい加減にしろ、ちょっと来い』と言って。それで警察沙汰になった」
研究チームはこのやりとりに、A受刑者が犯罪を繰り返してしまう理由があるのではないかと考えます。
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