
781人の受刑者を収容する、札幌刑務所。
拘禁刑の導入の中で、いま力を入れているのが受刑者との「対話」です。
2025年10月、札幌刑務所の会議室で、60代のA受刑者はこう話し始めました。
「今回初めて、出所してからまったく行くところがない。眠れない、不安で」
A受刑者の言葉に耳を傾けるのは、北海道医療大学の教授らでつくる研究チームと刑務官です。
窃盗などの罪を繰り返し、刑務所に入ったのは今回で7回目。A受刑者は精神障害に加えて、足腰が悪くて働けず、社会にいるときはグループホームなどで暮らしてきました。
しかし、今回は出所後に受け入れてくれる施設が見つからないといいます。
A受刑者は、自分の病状について、こう話し始めました。
「双極性感情障害という病気を発症してから20年以上。怒鳴ったりわめいたり脅したり、いろいろやっていたので、施設が素直に受け入れてくれないのではないかという心配がある」
北海道医療大学の向谷地生良特任教授は「こうしたらいいという答えは私たちも持っていないが、一緒に考えることはできる」と話しましたが、A受刑者はこんな言葉を口にしました。
「もしだめだったら死ぬしかない」
そんなAさんに、札幌刑務所の刑務官は「自暴自棄になったらダメ。やれることがまだ時間が少ないとはいえあるから。札幌刑務所の職員も、何もないままAさんに出てもらうというのは絶対にしたくないから」と語りかけます。

受刑者と対話を重ねる「当事者研究」と呼ばれるこの取り組み。
北海道医療大学の向谷地特任教授が、2000年ごろ北海道浦河町の精神障害者が暮らす施設「浦河べてるの家」で始めました。
塀の中の当事者研究では、犯罪を繰り返してしまう受刑者とこれまでの人生や将来の不安について話し合い、社会でうまくやっていけない理由を探します。
A受刑者は、2025年4月から毎月1回、この研究を行ってきました。
しかし、8回目の当事者研究はいつもと様子が違っていました。
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