2023.05.11
みがく毎日がんばる“わたし自身”を、いたわってあげませんか?
ココロとカラダをセルフケアするためのTipsを、簡単な運動と共にゆるっとご紹介。北海道内を中心に、25年以上に渡って「女性の健康と運動」を研究・サポートしてきた、寅嶋先生にご提案いただきます。
こんばんは、とらしまです。前回まで、妊活と運動のお話をしてきましたが、今回からはその流れで、妊娠中の運動について、4回にわたって触れていきたいと思います。
さて、妊娠中って、運動に限らず、「していい?ダメ?」と迷うこと、たくさん出てきます。そして、さらに妊娠中の女性を惑わせるものも。それが、 「妊娠中の常識」の時代による変化 です。
私は子どもが3人いまして、3人目が生まれたのは、1人目を出産してから5年後のことでした。でも、そのたった5年でもう、推奨される妊娠中の過ごし方は変わっていて、とても戸惑った記憶があります。
体を動かすことについて、具体的に病院からどんなことを言われたかというと……
だいぶ違いますよね。当人としては、心配されていることはわかりつつ、厳しい管理も情報の錯そうも、結構きつかったです。
私は自分自身の経験の中で戸惑いましたが、初産であっても、親や周囲から聞いていた情報と医師に言われることが違っていて困ってしまう人は、きっと多いのではないでしょうか。
では、実際のところ 妊娠中の運動は、してもいいか、ダメなのか? というと……。
医学的には、 「運動が妊娠中の健康維持にとても重要」 ということが認められています。
日本産婦人科学会では「週に2回程度、1回60分以内の運動」を推奨しています。アメリカスポーツ医学学会やアメリカ産婦人科学会の場合は「毎日20~30分前後の運動」を推奨していて、ウォーキングやストレッチングは積極的に促しています。実はこれ、以下のようなことも視野に入れているからなのです。
運動はこのように、妊婦さんにさまざまなプラスをもたらしてくれるんですね。
一方で、「妊娠初期の激しい運動は流産のリスクを高める」ということもわかっています。日米の学会でも、「運動を推奨する」としているのは妊娠中期以降からになります。
ですので、妊娠中の運動の是非についてのお答えとしては、「母体が健康、経過も順調(合併症などのリスクなし)で体を動かしてほしい。運動を始める目安は、およそ12~16週頃。ただし、病院の指示のもとに行いましょう」という回答になります。
妊娠中の身体の状態は、初期、中期、後期で違いますし、環境や体質などの個人の要因によっても大きく変わりますから、適切な運動量も人により違います。ですので、主治医への相談や質問を密に行って、体調を見ながら無理せずに行ってほしいです。
運動の内容や回数も、お悩みポイントの一つだと思います。日本とアメリカ、それぞれの学会が推奨する内容を見ても、日本は「週に2回」、アメリカは「毎日」だし、運動の内容も違うし、どっちが正しいの?と思った方もいるかもしれません。
これは、「どちらも正解」です。やはり、人により「適度」の度合いは違います。母子共に健康で過ごすためには、医師に相談しつつ、無理しすぎない程度の運動を心地よく続けることが大切です。
妊娠中は赤ちゃんの成長と共にお腹が前へはりだしてくるため、背中や腰回りに負担がかかりやすくなります。そこで、血行促進を図り、痛みを改善するのに役立つ、背中や腰回りを伸ばすストレッチングをご紹介します。呼吸をしっかり行うことで、便秘予防にもなりますよ!
①膝立ちになって、壁に両手をつき、下をむきながら背中を伸ばしていきます
②背中を十分に伸ばした状態で、5秒ほど、深い呼吸をゆっくりとしながらそのままの姿勢をキープします
③元の位置へ戻ります。これを3~5回繰り返します
辛ければ、ゆっくりと1回行うだけでもOK!
余裕があれば少し弾みをつけて、壁をグングンと押しながら背中を伸ばしましょう。いすや、バランスボールを使用するのも◎ですよ。
こころもカラダも、ゆったり、ワン・ツー・スリー!
明日も、みなさんが元気な1日を過ごせますように。
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■プロフィール:寅嶋静香(とらしましずか)
京都工芸繊維大学研究員。2001年東京大学大学院 生命環境科学系身体運動科学講座終了 PH.,D(専門:運動・スポーツ生理学)
女性と運動の関係を研究するかたわら、「産後こそ、母になったご自身を大切に……」を合言葉に、科学的なエビデンスに基づく、安全・安心を担保しながらの産後の母親支援(健康サポート)を北海道内で12年間実施。このほか、更年期女性へのケア講座なども道内各地で実施。主な著書に「バウンス運動の生理学的基礎~バランスボールで弾む運動の科学的分析~」(ブックハウスHD、2022年8月)
Edit:ナベ子(Sitakke編集部)