ミステリー作品としての魅力もありながら、フィクションを通して「現実」を描いているように感じました。

映画ではさまざまな形の暴力が描かれますが、わかりやすく暴力をふるう悪と、救う善とに分かれているわけではありません。登場人物それぞれがあまりに人間らしいことに、よりリアルな残酷さがありました。
一人の人間の中に「被害者」と「加害者」の両面があり、「加害者」にも弱さがあり、抑圧されてきた「被害者」の感情が噴き出す瞬間があり…。
誰かを救う側であろうとするのに、自分自身が負った傷に揺り戻され、完ぺきではいられない…。

被害者心理・加害者心理の複雑さや、暴力を受け入れてしまう恐ろしさ、声をあげる選択肢も持てない境遇…すべて現実にある課題が、ありありと描かれていました。

苦しい現実が迫りながらも、その合間に楽しい、心から笑い合うシーンも多く描かれているのが印象的です。壊れたはずの心が動く瞬間があり、だからこそ切なく胸に迫ります。
単純な善悪や、誰か一人の物語では描けない、人と人が交わり合って変わっていく展開に、苦しさも、救いも見えてきます。
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