よくできたミステリー小説は、映画化できないものだと思っていました。
小説だから、文字だけの世界だからこそ仕掛けられる謎と解き明かし方が、ミステリー小説の魅力だと思うからです。
湊かなえさんの原作小説『未来』は、「手紙」をキーにして物語が進んでいきます。
まさしく文字の世界だからこそできる構成なので、これをどう映像化するのか、ハードルは高いように思うのですが…。
映画『未来』は、映像だからこそできるミステリー作品を作り上げたのだ、と感じました。
それを支えるのが、「言葉を超えた演技」の力です。

過酷な状況に身を置かれる少女を演じる、山﨑七海さん(佐伯章子役)、野澤しおりさん(須山亜里沙役)。
セリフがないシーンでも、山﨑さんの瞳や表情、仕草ひとつから恐怖や不安が伝わります。野澤さんはとてもかわいらしい満面の笑みを見せるのに、同時に悲しさや強さや衝動をにじませます。

章子の両親を演じた松坂桃李さん、北川景子さんの演技には息をのみます。
親としての愛情や優しさ、突然ふいにスイッチが切れたように覗く影。セリフに頼らない表現力に、それぞれが「秘密」を抱えていることが伝わってきます。

そして、章子の通う学校の教師である真唯子を演じた、黒島結菜さん。
何かを見抜いているような強いまなざしや、章子の声にならないSOSに気づいて迷わず駆け出していく行動力はどこから来るのか、多くを語らない真唯子自身の謎にもひきつけられていきます。
章子に「未来のわたし」から手紙が来る、というのが、物語を通しての最も大きなミステリーなのですが、キャストたちの演技によって、「なぜこんな表情をしているのか/なぜこんな行動をとるのか」「どんな秘密を抱えているのか」「それがどう物語の展開に影響していくのか」と、登場人物それぞれに対して、どんどん新たな謎が生まれていきます。
何人もの人生が折り重なっていく、巧みなストーリー展開。
積み重ねられた疑問がつながり、ラストで謎が明かされるミステリー作品としてのおもしろさがあります。
「未来のわたし」の手紙の正体がわかったとき、その文章の内容を反芻すると、そこに隠されていた想いの強さも、一気に胸に迫ります。
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