2023.11.28

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息子の命を奪われても、厳罰は求めない。ただ“当たり前の権利”を…「知りたい」と願った9年間

9年前、2014年2月。

「担当の医師と看護師さんが来て、『お気の毒ですけど』と話を聞かされて。病室入ったら、まだちゃんと拭いてない血があって、びっくりしたというよりも、なんだかもうあまりにもひどい状況で言葉も出ないというかなんとも」

弘宣さんは、勤務先の精神障がい者の自立支援施設で、入居者の男性に刃物で首を刺され、死亡しました。

しかし、男性は不起訴処分に。
起訴前の鑑定留置で心神喪失の状態であるとされ、刑事責任能力が問えないと判断されたのです。

木村さんは、「検察としては不起訴にせざるを得ないんですと説明されたんだけども、全然納得いかなかった」と話します。

司法のもとで社会復帰のために医療を受ける「医療観察法」の対象者となった男性。
木村さんは、加害者のその後を知ることができなくなりました。

「被害者に対する情報提供については全く、他の一般の刑事事件の被害者と何ら変わらないはずなので。医療観察法そのものを被害者の視点から検証して正すべき」

本来あるはずの「権利」がない

刑事裁判であれば、被害者は裁判に参加し、事件について知ることができますが、木村さんにはその権利がありません。

いわば加害者側の治療を担当する賀古センター長は、現在木村さんが理事をつとめる被害者支援の活動に参加しています。

賀古センター長と木村さん

木村さんと出会い、事件には、被害者の存在があることを実感したといいます。

賀古センター長は、「加害者支援の施設をやっていくうえで、被害者の視点を絶対に忘れてはならない。うちの施設ができる何年も前に、木村さんに教えていただいた」と話します。

被害者遺族には、なぜ事件が起きたのか、加害者の動機や謝罪しているかなどを知りたいと考える人が少なくありません。

しかし、「刑事責任能力なし」として、不起訴となった事件の被害者への情報提供は、
①名前 
②処遇段階(入院・通院・終了) 
③保護観察所名 
④担当者との面談回数 
の4項目だけが、紙1枚で開示されるのみです。

情報開示は、加害者の病状復帰の妨げになると考えられてきました。
この情報すらも、木村さんたちの活動によって近年、開示されるようになったのです。

木村さんは、息子さんを殺害されたにもかかわらず、精神障害者の支援を続けてきた息子さんの意志を尊重し、加害者の厳罰化を求めていません。
ただ、被害者として当たり前の権利がほしいと話しています。

木村さんは現在も国に対して、この医療観察法の中に、被害者側の存在を意識するよう求めています。

連載「じぶんごとニュース

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年10月12日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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