2023.03.24
深める津波からの避難が難しい学校に、救命胴衣を贈る活動があります。
取り組みを始めた、小学校教諭の思いとは?
石狩の浜益小学校。
3月10日、全校児童28人に、特別な救命胴衣が贈られました。
「命を守るこのジャケットが、プレゼントです」
きっかけとなったのは、千歳の小学校教諭、渓口正裕さんです。
渓口さんは4年前、当時勤務していた浜益小学校で避難訓練を担当し、大きな課題に直面しました。
「逃げる場所がない。3キロ離れた山まで避難というのが一応学校でのルールだったんですけど」
浜益小学校は、津波が到達するまでの間に自力で安全な場所に避難することができない「津波避難困難区域」に位置しています。
津波到達までの時間は、最短でわずか5分。
学校の計画では、子どもたちをおよそ3キロ離れた高台に教員の車を使って避難させる想定ですが、高台に続く道路は2本しかありません。
地震の影響で渋滞が発生したり、道路が寸断されたりすると、子どもたちは自分の足でおよそ3キロ先まで避難しなければなりません。
渓口さんは、「日本海の津波は到達が早いので、危険に本当にさらされている」と話します。
渓口さんは対策を考えましたが、学校の移転や津波避難タワーの設置などは、予算面からすみやかな実現は困難でした。
しかし、転機が訪れます。
東日本大震災の津波で、子どもたち74人の命が失われた、宮城県石巻市の大川小学校への訪問でした。
「知識としてはあっても、現場に立たないとわからない。ショックもありましたし、考えさせられることもありました」
「大川小の悲劇を繰り返すわけにはいかない」。
渓口さんはすぐに始められる対策として、「救命胴衣」にたどり着きました。
「何もしないのはダメだろう、何もしないのはやっぱり人災だろうというのがあったので」
これは、津波に対する救命胴衣の効果を調べた実験映像です。
救命胴衣を身に着けていない人形が津波に飲み込まれてすぐに沈んでしまうのに対し、身に着けている人形は津波の中でも海面に浮いて留まることができます。
渓口さんは、津波対策用の救命胴衣を開発した加澤慶久さんに、浜益小学校が直面している現状を伝えました。
加澤さんは、「僕も人の命を助けるために作ったもの。渓口先生の言葉に心打たれまして、それで協力させていただきました」と振り返ります。
渓口さんの思いが加澤さんを動かし、浜益小の子どもたちに救命胴衣が贈られたのです。
渓口さんは、「ぼくもやっぱりあの子たちの笑顔と出会わなければ、どこか他人事だったと思うし、うれしさもあるよね、子どもたちにこういう形で返すことができてよかったなと思って」と話していました。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年3月10日)の情報に基づきます。
■日本一周中に「余命2年」宣告…すい臓がんと闘いながら結婚、旅再開を目指す2人
■ 78歳の「ひとり雪まつり」!孫のために毎年欠かさず、雪像を手づくりで【札幌】