2023.03.19
深める「アンジー」
声をかけると、「にゃーん」と答えます。ひざの上に登って、すり寄って来ました。
4歳のアンジー。
札幌の大東緒里絵(おおひがし・おりえ)さんの元へ来て、まだ10日あまりですが、もうすっかりここが「我が家」です。
「アンジーはめちゃくちゃ甘えっこ。かわいいですよ」
「先住ネコにも甘えています。先住ネコはもうおじさんなんですけど、おっぱいを前足で踏むような仕草をしたりします。かわいいですね」
でもアンジーは、ただの飼いネコではないんです。
ここにいるネコはすべて「保護ネコ」。
この保護ネコ譲渡会を主催した「ツキネコ北海道」では、飼育が困難になったネコや多頭飼育の現場から保護したネコを、次の飼い主へとつなげています。
ただ、保護団体によっては、条件もあります。
ツキネコ北海道の吉井美穂子代表は、「どうしても高齢者に対してネコを譲渡できないという団体がとても多い」と話します。
ネコは20年を超えて生きることもめずらしくありません。
引き取り手が高齢者の場合、最期まで責任を持って飼えるのかという心配があります。
一方で、吉井代表は「うちもキャパオーバーになってしまって、ネコだらけになってしまった。そうなると感染症も増えるし、病気も蔓延する。ネコのストレスもマックスになる」といいます。
ツキネコでは去年1年間で600匹以上を保護しました。
吉井代表は、「ネコが保護団体にいるよりも一般家庭に入ったほうが絶対に幸せ」「飼い主の年齢ではなくて、周りの環境、家の環境が大事と思う」と話します。
そこで始めたのが、ネコの「永年預かり制度」です。
希望する高齢者に、ネコを「預ける」形で譲渡し、病気などで飼えなくなったときには、ツキネコがネコを「引き取る」仕組みです。
69歳の大東さんの家で暮らすアンジーも、永年預かり制度でやってきた元保護ネコです。
「預かり」とは言っても、ネコとの暮らしぶりは、普通の飼い主とまったく同じです。
ただ、家の一番目立つところには、「預かり証明書」を貼り、万が一ネコだけが残されたときでもツキネコに連絡が行くようにしています
大東さんは、「年取ってくると、やっぱり色々心配が出てくるじゃないですか。体のね。でもそういうことであれば、またツキネコさんでそういうケアをしてもらえると思ったら、安心できると思います」と話します。
2015年から今までに「永年預かり」されたネコは309匹。
このうち10匹がツキネコに戻ってきましたが、次の預かり先にいくなど、新しい居場所を見つけています。
ネコにとっても、飼う高齢者にとっても、保護ネコの対応にひっ迫しているツキネコにとってもうれしい「ウィン・ウィン・ウィンの制度」だと、吉井代表は胸を張ります。
そして、飼育放棄などで、行き場を失ったネコたちにも、最期の時を過ごすための場所ができました
去年10月、岩見沢の60代の男性の家から、32匹のネコが保護されました。
「多頭飼育の崩壊」です。
このうち31匹は「猫エイズ」に感染していました。
こうした現場から保護されるネコは、病気を持っていたり、人慣れが難しかったりと、新しい飼い主に譲渡できない個体が多いといいます。
そんなネコたちの”ついの住みか”が「月虹山荘(げっこうさんそう)」です。
ツキネコ北海道の吉井美穂子代表によると、ここは「全道から来たネコたちで、飼育放棄、飼えなくなった人からの引き取りもしているので、やっぱり高齢で譲渡が難しい子の最終的な場所」。
ツキネコ北海道が去年から始めた取り組みで、多頭飼育から保護したネコのほか、飼い主の入院や死亡によって残されてしまった高齢のネコなどの余生をスタッフが見守ります
吉井代表は、「本当はこういうところがなくなるのが理想なんですけど、そうも言っていられないし、みんなが幸せなきもちになれる場所にしていきたい」と話していました。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年2月22日)の情報に基づきます。
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