2023.03.18
深める「七海、ねえねの鉛筆どこへやった?」
宮城県に住む阿部一花さんです。
3歳の妹、七海ちゃんと遊ぶのが日課です。
いま小学6年生。「推し」のアイドル「なにわ男子」とともに、一花さんのお気に入りが、この木のベビーチェアです。
父の剛さんと、母の香紀さんが、「まだ座れるんだね、もう高さ合わないから座れないかと」「何気に座ってるよね」と声をかけます。
「なんか落ち着くというか、ほんとに気持ちがいいので…」と話す一花さん。
これは、「君の椅子」です。
「生まれてきてくれてありがとう」。
赤ちゃんへの初めてのプレゼントに、道産の木で作った椅子を贈る、上川の東川町で始まった取り組みです。
震災に負けずに生まれた新しい命を祝福したい。
2011年には、地震が起きた3月11日に東北で生まれた104人の赤ちゃんに「君の椅子」を届けました。
一花さんも「君の椅子」を受け取ったひとりです。
生まれて4時間後に地震が襲いました。
2016年、母の香紀さんは、「病院も全部、電気とか水道が止まったので、建物も危ないから外に避難して。看護師に『しっかりしなさい。あなたがちゃんとこの子を守るのよって手渡されて』」と話していました。
ライフラインが断たれた産院から、車に避難。
雪が降る厳しい寒さの中、香紀さんがわが子を抱いて温め、命を守りました。
多くの命が失われた3月11日。
幸せであるはずのわが子の誕生を喜ぶことができずにいた家族のもとに届いたのが、「君の椅子」でした。
2016年の取材で、父の剛さんは「被災した時は余裕もなかったですし、思いやりが温かったですね」と話していました。
つかまり立ちをしたときも、遊ぶときも、北海道からやって来た椅子は、一花さんに寄り添い、家族に溶け込みました。
あれから12年。
今でも「君の椅子」と暮らしています。
母・香紀さん「落書きがいっぱいあるんですよね、めちゃくちゃだよね。お絵描きしすぎて椅子にまで描いちゃった」
一花さん「それが多分思い出」
もうすぐ12歳の誕生日。
「自分の誕生日」への考えを、言葉に紡ぎます。
一花さん「(両親は)すごいと思うし、地震の中で守ってくれたことに感謝はちょっとあります」
「3月11日は、私の誕生日」
「自分」を持ち、照れながらも、両親に感謝する大人の言葉です。
母・香紀さんは、「お誕生日あんまり人前で3月11日って言いづらかったんですけど、『この子の居場所はここにあるよ』ってメッセージを込めてこの椅子をいただいたので、この子の誕生日を素直に祝っていいんだなって思わせてくれた」と話します。
妹の七海さんをおんぶして、「重くなったね。ねえね、最近体力ないのよ」と話す一花さん。
将来の夢は「保育士」。家族思いの優しいお姉さんです。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年3月7日)の情報に基づきます。
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