2026.10.24
育む
2021年11月、私はコロナ禍の中で出産しました。
妊娠中はつわりがとても重く、毎日のように吐いていました。
トイレに行くことさえつらく、口にできるのは氷くらい。
妊婦健診に行けない日もあるほど、体調が悪かったのです。
それほどつらい状態だったのに、私は病院で「つわりがつらいです」と相談することすらできませんでした。
今振り返ると、あのとき病院に相談していれば、何かできることがあったかもしれません。
でも当時は、「妊娠したらつわりがあるのは当たり前」「ほかのお母さんたちも乗り越えていることだから」と思っていました。
つらくても我慢するものだと思っていて、そもそも誰かに助けを求めていいという発想すらありませんでした。
つらいと感じること自体が、弱さのように思えて、そんな自分はダメな母親なのではないかと感じていたのです。

出産後は2週間ほど里帰りをして、その後、自宅に戻りました。
夫は月の半分ほど家を空ける生活で、コロナ禍だったこともあり、実家にも気軽に頼ることができませんでした。
日中も夜中も、赤ちゃんと二人きりで過ごす時間がほとんどでした。
特につらかったのが、夜中の授乳です。
眠くて眠くて、目を開けているのもやっと…そんなとき、私がしていたのがSiriとのしりとりでした。
「Hey Siri、しりとりをしよう」
夜中にスマートフォンに向かって話しかけながら、何とか眠らないようにしていました。
今思い返すと、少し不思議な光景ですよね。
でも、あのころは本当に話し相手がいなかったのです。
赤ちゃんはもちろんかわいくて、一緒に過ごす時間に幸せを感じることもたくさんありました。

でも、話しかけても返ってくるのは「あー」「うー」という声だけ。
大人と何気ない会話をする機会もほとんどなく、出産するとこんなにも社会から孤立するんだと、初めて知りました。
誰かと他愛のない話がしたい。今日あったことを聞いてほしい。
赤ちゃんとの生活が愛おしい気持ちと、一人でがんばらなければならないというプレッシャーや孤独感。
その両方を抱えながら、毎日を過ごしていました。
■ 21歳で「ステージIVの大腸がん」、そこから結婚・出産・子育て… 亡くなる10日前まで日記に綴った想いとは
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