2026.10.03
深めるきみちゃんは、性同一性障害との診断を受け、一度は性別適合手術を受けようと決めていました。
戸籍の性別を変えるため、子宮と卵巣もとる予定でしたが、ちかさんと出会い、考えが変わりました。
「子宮と卵巣をとってしまったら、2人の血のつながった子どもをもつ可能性はゼロになる」
戸籍は女性のまま、ちかさんと法律婚をして、自分たちの子どもを産む道を選びました。

5年前、きみちゃんのおなかには、ちかさんとの間に初めての命が宿っていました。
性自認が男性であるきみちゃんにとって、妊娠・出産をすることには、大きな葛藤もありました。妊娠・出産は、体が女性であることを突きつけられるような経験でもあります。
助産師から「下から生むのはどう?」と聞かれたときは、俯きながらなかなか答えが出せないでいました。激しい葛藤に苛まれていました。

それでも、深い愛情を持って、子どもに会える日を心待ちにしていました。
「希望にあふれた子に育ち、人を希望に導けるようになってほしい」という想いをこめ、名前は「羅希(らき)」と決めていました。
しかし、2021年12月28日。
きみちゃんはちかさんが立ち会う中で、羅希ちゃんを死産しました。
その前の日の検診で、羅希ちゃんの心臓が止まっていることがわかったのです。担当の医師によると、死産は1%ほどの確率で起こる決して珍しくないことで、原因がわからないことが多いといいます。
きみちゃんは、羅希ちゃんに手紙を書いていました。

「羅希へ
ぼくたちの間にきてくれてありがとう。うまれてくるのをたくさんの人たちとともにまっていたんだよ。また天国で会おうね。大切で大好きな羅希ちゃん!忘れないよ!!ありがとう!!」
初めての妊娠・出産にあたって、2人を苦しめていたのは心の中の葛藤だけではありません。
インターネット上で、「ただの変態カップル」「申し訳ないけど気持ち悪い」など、心ない言葉を浴びました。それでもきみちゃんは、こう話していました。
「世間から、父親と母親っていう概念がどうとか、子どもがいじめられるとか、かわいそうって言われてた。そんなことない、そんなことさせない、そうじゃないっていうところを、ちかさんと見せていきたいと思っていた」
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