「”ガチ勢”が多いね」長女が周りを見てつぶやく。「何それ?」初耳なので聞き返す。
「自分の『推し』をとことん推しまくる、半端ない人たちのこと」
ここは、札幌で開かれている、サッカー漫画『ブルーロック』の原画展。
メインの客層は、10代後半から30代前半とおぼしき女性たち。関連グッズの買い方がまさに半端じゃない。中国人顔負けの爆買いだ。うっすら聞こえてくるトークから察するに、何回も来ているリピーターのよう。確かに“ガチ”だ。
4月から中学生になる長女たってのリクエストで、この原画展にやってきた。ちなみに、長女はサッカーのルールを全く知らない。メッシやロナウドも知らない。
それでいて、サッカー漫画好きとはこれ如何に?
「“ブルロ”のグッズ、何がいいかな?」長女は屈託のない笑みを浮かべた。
「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」
(by絵心甚八(ルビで「えご じんぱち」)※『ブルーロック』1巻1話より引用)
日本をW杯優勝に導く世界一のストライカーを創る壮大な実験。その名も「ブルーロック(青い監獄)」プロジェクト。ハイテクトレーニング施設・ブルーロックに集められた300人の才能あふれる高校生FW(フォワード)が、互いのエゴイズムをぶつけ合う。
情け容赦無くふるいにかけられ、次々に脱落する若者たち。デスゲームさながら、負けたら終わりの緊張感あふれるストーリーだ。
「全員攻撃得意なフォワードって、守備崩壊でしょ」と突っ込みたくなる作品だが、圧倒的な勢いでそこを押し切り、有無を言わせず読者を引っ張っていく。
自分が少年時代に愛読した「キャプテン翼」とは真逆の世界観。「ボールは友達」がモットーだった翼くん、岬くんら仲間との絆を大切にしていたな。日向くんのタイガーショットもすごかったけど。
累計発行部数は3,000万部超。アニメ化され、4月にはスピンオフ版が全国の映画館で上映される大人気漫画だ。
「ボケ」「カス」は当たり前。試合中の登場人物たちのセリフは、なかなか刺激的な単語のオンパレード。その場で自分が言われたら、間違いなく心が複雑骨折する。
長女は「クラスの男子の言葉遣いはもっと汚い」と、大して気にしていない。それはそれで問題ですが。
実在する選手や監督を批判し、皮肉るシーンもあり、ネット上では賛否両論だ。
一方で、グッとくる名ゼリフの数々も。
「過去なんてどーでもいい!俺が見たいのはお前の“今”だ」
(by潔世一(ルビで「いさぎ よいち」)※『ブルーロック』3巻16話より引用)
「正しい選択をするんじゃなくて、選んだ道を正解にするんだ」
(by蜂楽廻(ルビでばちら めぐる)※『ブルーロック』18巻154話より引用)
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