2024.02.02

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「古い会社だからこそ、堅苦しくないことをしたい」物語を紡ぐ圧巻の巨大ジオラマがある老舗和菓子店

老舗和菓子店の2階へ続く階段を登っていくと、視線の先に見知らぬ街の姿が見えてくる。一歩一歩あがっていくたびに視界が開けていくのは、高層タワーのエレベーターに乗っているような感覚だ。登り切った先には、小さく賑やかなジオラマの街が広がっていた。

『五勝手屋本舗』で6代目を務める小笠原敏文さん

ビックベン、自由の女神など実在の建物やモニュメントが多数。「橋を買ったから、今度は川を作ろう」という感じでどんどん街が広がっていった。

このジオラマを制作したのは、丸缶羊羹でお馴染みの『五勝手屋本舗』で6代目を務める小笠原敏文さん。コロナ禍で使用されなくなった店舗2階の休憩スペースに、幅4メートル・奥行き3メートルの街を作り上げた。街をぐるりと見渡してみると、エンパイアステートビルやタワーブリッジ、ノートルダム大聖堂など、実在の建物がたくさん並んでいて宝探しのような楽しさがある。そうかと思えば、路地にいきなりゾウが歩いていたり、映画の一場面が再現されていたりと、ファンタジー要素も満載だ。俯瞰で眺めると自分が巨人になったような感覚を、視点を下げると街のなかに入り込んだような感覚を味わえるのが面白い。

幼い頃からプラモデルやブロックで遊ぶのが好きだったという小笠原さんがジオラマと出会ったのは小学生のとき。函館の西武デパートで行われていた催事でのことだった。「たぶん40年くらい前だったと思うんですけど、西武デパートでアメリカの老夫婦が作ったミニチュアの展示が行われてて。それを見て、自分もいつかジオラマを作ってみたいと思ったんです」。

その衝動は小笠原さんのなかにずっと残っていて、アメリカ留学中の1997(平成9)年のクリスマスに、妹さんからDepartment 56社製のライトハウスをプレゼントされたのをきっかけに部屋の片隅でジオラマを作るようになった。その精巧で可愛らしい世界観に引き込まれた小笠原さんは、毎年少しずつコレクションを増やし、4年前からお店での展示を開始。最初は1階のショーウインドウに飾っていたが、徐々に規模を拡張し、今では建物が約200点、人物は400体ほどの巨大なジオラマになっている。

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函館の新しい「好き」が見つかるローカルマガジン。 いまだ開港都市としての名残を色濃く漂わせる函館という街の文化を題材に、その背後にいる人々を主人公に据えた月刊のローカルマガジン。 毎号「読み物であること」にこだわり、読み手の本棚にずっと残り続ける本を目指して編集・制作しています。(無料雑誌・月刊/毎月10日発行)

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