2023.12.02
深める私:すみません、ちょっとだけお時間いいですか?
おじいさん:大丈夫ですよ。
筆を止め、話をしてくださったのは、小樽生まれ、小樽育ちの奥平康幸さん。現在77歳。
私:絵がとてもお上手ですね、今日は何時くらいから描かれているんですか?
奥平さん:朝10時くらいからかなぁ。ちょうどいまそろそろ帰ろうかなあと思っていたところ。
現在ごご2時。4時間もここで絵を描いていることになる。
私:何年間くらい、絵を描かれているんですか?
奥平さん:中学生くらいからかなぁ。本格的に絵を描き始めたのは、退職するちょっと前くらいからだよ。
私:絵を習っていたことはあるんですか?
奥平さん:高校のときに1年だけ絵を習ったことはあるよ。だから、ほぼ独学だよ。
学生時代から絵が好きだったという奥平さん。
絵の中の運河は、波の形と奥行き感、空の色が繊細なタッチで描かれていて、秋の空気感さえ感じられる。独学でこの完成度の高さなのかと驚いた。
奥平さん:もともと妻が大谷大学の美術学科出身でね、絵は妻に厳しく指導されました(笑)
そう笑いながら穏やかに話す奥平さん。普段も海や水辺があるところで絵を描くことが多いそうだ。
その理由は「単純に好き」だから。海を描くときは、ちょっと遠くから書くのがコツで、絵を完成させるには、だいたい2~4日かかるらしい。
私:いつも小樽で絵を描かれてるんですか?
奥平さん:いや、ここは今年で3回目です。これまでいろんな場所で描いてきたけど、小樽運河を描くのは、今年が初めてなんだ。
奥平さんは、一度気に入った場所を見つけると、何度も足を運んで描くらしい。積丹の神威岬がお気に入りで、もう17年も同じ場所で描き続けているそうだ。
毎回同じ場所で描いていても、季節や時の巡りで、同じ絵にはならないらしい。奥平さんは「人生と同じ。そのときのタイミング次第だなあ」と笑っていた。
「小樽運河は描きにくいねえ。人に絵を見られるのが、緊張する。そんなうまい絵じゃないし」
と照れた笑いをこぼす奥平さん。かわいらしい一面に、ほっこりした。
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