2023.10.31
深める「世界遺産知床の自然と人とヒグマの暮らし」(少年写真新聞社)。彰浩さんの撮影した写真に、かおりさんが文章を添えています。
「出版社から依頼をいただいて、全国の子どもたちが対象だけど、大人も満足できるようにしてくださいって言われたんですよ。責任重大だなと思いました」
彰浩さんとかおりさんは、写真展を開催するとき、写真だけでなく、知床財団が作った啓発のはがきを置くなど、クマと人の現状を伝えようとしていました。そうした活動が、本につながったといいます。
写真で感じ取ってほしいという気持ちはもちろんありながらも、次のページをめくりたくなるような展開をつけようと、文章を添えることにしました。
「道外出身の人間が北海道の大事な生き物をメインとした本を出すことの責任を感じて、きちんと取材してきちんと伝えたいと思いました。地元の方が読んだときに違和感を感じない内容にしたいと思ったので、何回も通って、いろんな立場の人の話を聞くことに尽力しましたね」
本には、自然の中で生きる、クマの姿が映し出されています。でも、読み進めると、素晴らしい写真を見せるだけのための写真集ではないことがわかります。
クマの命を左右する、植物、魚、人…。あるクマのストーリーを追うなどの演出はつけずに、淡々と、知床の営みが描かれています。
「環境と、人と、動物がいて、複雑に絡みあって今があるということを伝えたかったんです。観光客も、地元の人も、なんらかの形で影響を与えていると、易しい言葉で伝えたかった。読んだ人がどう感じて、これからどんなふるまいをするかということに、影響や気づきを与えることができればと思っています」
人の努力も丁寧に取材した成果が詰まった本。映っているクマは、特定のクマではないのも、学びの表れです。クマの人慣れを進めないように、同じクマを追いかけたり、長時間見続けたりはしないように撮影しているといいます。
完成した本は、地元の自然ガイドやクマの研究者からも好評で嬉しかったと、ほっとした笑顔で話していました。