2023.10.31

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「どうにもならないことって、たくさんある」それでも“豊かな人生”を…知床でカフェを営みながら自然を見つめる夫婦

ずっと働きたいと思っていたけれど…夫婦そろって退職

会社の仕事と、撮影と。その生活の中で、彰浩さんの親の介護が必要になる時期が来ました。

当時は、今よりも共働き世帯が少なく、介護休暇制度も充実していませんでした。かおりさんの職場でも女性の技術者はほとんどいなかったため、「両親の介護を妻に任せる男性って多いと思っていた」といいます。

ただ、彰浩さんはかおりさんに「仕事を辞めて」ということはなかったといいます。それがありがたかった、と振り返っていました。

彰浩さん

2人は、仕事や介護をしながらも、撮影の時間も大切にしようと決めました。

「介護は自分だけではコントロールできないので、もちろん優先。写真を撮るための予定は、何かあったときはキャンセルすること覚悟で入れていました。でも、自分の人生の時間の中に、少しでもやりたいことを残していないとつらくなっちゃうよねと、主人と話していたんです」

かおりさんは、会社の仕事も大切にしていて、「ずっと働きたいと思っていた」といいます。
しかし、体を壊してしまいました。

続けようとがんばりましたが、体調が優れず、泣く泣く断念。
退職し、体調の回復と介護に時間を使うつもりでしたが、退職日まであとわずかというときに、彰浩さんの親が亡くなってしまいました。

実は、彰浩さんも、かおりさんと同時に退職することを決めていました。
彰浩さんはもともと、50才を過ぎたら早期退職して、自分の生き方をしようと思っていたそうで、いいタイミングだからと一緒に退職したそう。

退職後の2018年、写真家として独立しました。

そして翌年、年をとってもできる仕事をという考えもあり、カフェをスタート。

知床を選んだのは、「野生動物と人の住んでいる場所が、近いどころか重なっている場所を、もっとしっかり見ていきたいと思った」からだといいます。

何回来ても飽きることがないんですよね。同じ景色を見ることがなくて。同じ8月でも、上旬と下旬で景色がちがって、何度来ても見足りない気がしたんです」

住み始めてからはどうか訊ねると、「全然見足りない!」と即答。「動植物を包み込んでいる環境自体にすごく興味があるんです。どう毎年変化するかを、実感としてつかみ取りたい…まだまだ全然、学びが足りないと思います」

今回の取材のきっかけも、かおりさんの学びへの熱心さに惹かれたことでした。私がかおりさんに初めて出会ったのは、札幌で開かれたクマのフォーラム。勉強のために知床から札幌までやってきた、その熱心さに驚き、話を聞きたいと思いました。

「まだまだ学び足りない」と話す、かおりさんの目はキラキラしていました。その学びへの姿勢は、本にも表れています。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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