2023.08.31
みがく毎日がんばる“わたし自身”を、いたわってあげませんか?
ココロとカラダをセルフケアするためのTipsを、簡単な運動と共にゆるっとご紹介。北海道内を中心に、25年以上に渡って「女性の健康と運動」を研究・サポートしてきた、寅嶋先生にご提案いただきます。
こんばんは、とらしまです。4回にわたって続けてきた更年期スペシャルも、今回で一区切りです。
今回のテーマは、「変化とポジティブに向き合うための、ジブンの整え⽅」なのですが……。さっそく、「前向きに!ポジティブに!といわれてもさぁ〜……」と思われている方、いらっしゃるかもしれません。そうですよね。それだけ大変なんですから、更年期は……。
私自身、更年期世代。月経周期も乱れたり遅くなったり、かと思えば20日もたたないうちにきて「おそろしや~!」とトイレで叫んだりしています(笑)。
そんな経験も踏まえてここまで更年期の話をしてきたわけですが、でも実は、更年期であろうがなかろうが、現代を⽣きる⼥性はいつも、ストレスいっぱいで「大変!」です。
産後女性への健康講座でのこと。「出産、疲れましたでしょう?自然分娩だろうが帝王切開だろうが、どっちだって大変です。体を酷使してるんですから!」と話したら、笑いをまじえながらのつもりだったのに、涙を流された方が数名いらっしゃっいました。そのときの光景は忘れられません。
話を聞くと、「みんなすぐに赤ちゃんの話ばっかりで、誰一人ねぎらってくれなかった」とのこと。ひどいですよね、お母さんへの身体への負担も半端ないのに! だから、毎回、「出産、本当にお疲れ様でした!」から講座を始めていました。
更年期の皆さんもしかり。健康講座で「自身をねぎらいましょう」「更年期に入ってむかついたことをとにかく話しましょう」などのグループワークを行うと、まあ、いろんな言葉が出るわ出るわ……。つまり、それだけ大変な時期ということです。 介護、子育て、仕事に家事に地域での取り組みと、やることが満載な方がたくさん。だから、更年期の方向け講座でも「毎日お疲れ様です!」を最初に必ず伝えるようにしてきました。
インタビュー調査等を通じ、更年期女性から高齢の方、産前産後の方、大学生アスリートまで、さまざまな年代の女性へ接してきましたが、どの世代の女性も、びっくりするくらい、なんらかのストレスを抱えていらっしゃいます。みんな、本当に頑張って生きているんだと、ひしひしと感じるこの頃です。
さて、先ほどから使っている「ストレス」という言葉について。ストレスというと心の問題だと捉えられがちです。でも、身体にも「ストレス」はかかります。
ストレスという言葉を初めて使用したハンス・セリエは、「外的刺激はすべてストレスである」と定義しました。寒冷、外傷、疾病、痛みなど、身体が外部から受ける刺激も、嫌なことを言われたり、緊張する場面に立ち合ったり、知らない場所へ行ったりという心への刺激も、全部、「ストレス」なのです。そして、ストレッサー(外的刺激)を受けたときに、適応しようとする体の反応を「ストレス反応」と呼びます※1。
さて、興味深い実験談が、ある雑誌※2に掲載されていました。アメリカのある整形外科医が、腰痛患者数百名に対し、根本原因を探るためにいろいろと調査をしました。すると、骨もずれておらず、筋肉に問題があるわけでもないのに「腰が痛い!」と訴えてきた人が患者の4割近くいたというのです。
話を聞いてみると、ストレスから自律神経系が乱れ、呼吸が浅くなっており、それがあらゆる筋肉の血行不良を引き起こし、脳へも酸素がなかなか行きわたらなくなっていたそうです。結果、腰部分へと「だるさや痛みを感じる」という信号を脳が送っているのではないか、とのことでした。
腰は、身体の中心部で上半身全体を支えている、さらに歩くだけでも体重の2倍以上の負荷がかかっている部位です。リラックスできていない状況が継続すると、この、一番疲労度が高い腰へ、自然とダメージがくるのではないかと考えられています。
心が先か体が先かはともかく、この「心身が関係している」というところが重要です。更年期世代は、身体にかかるストレスがとても大きいのに、身体のことを二の次にしがち。やるべきことがたくさんあるのは素敵だし、充実感もあると思いますが、自分のことも大事にしてほしいと切に思います。
腰がだるい、肩が上がりにくい、首回りががちがち、頭がぼーっとする、全身が変……全部、明らかに身体からのSOSサインです。でも、せっかくそこに気づいても「ま、いっか、死ぬほどの問題じゃないもんね」と放っておく人が多いもの。それはもったいない!サインへ気づいたら、ちょっと伸びをしたり動かしてしてください。それでもすっきりしない場合は、何かが隠れている可能性を考えてみてほしいのです。
もちろん、今までとは違う自分への戸惑いもあると思います。いいです!戸惑いましょう(笑)!心と体の大きな変化には、誰だって戸惑うものなんです。戸惑った自分をまずは褒めましょう。そして、不調やチェックの結果にうろたえるのではなく、無視するのでもなく、「来たわね、更年期!運動しますもんね~!」と向き合っちゃいましょう。
健康講座でお会いしたみなさまは、運動を媒介として、ご自身を見つめ直し、とっても元気に過ごしてくださいました。運動がすべてと、もちろん言いません。そうではなく、自分に合った運動やストレス解消法を見つけていくことで、元気になっていったのです。一歩引いて落ち着いて自分を見つめ直す。ストレスから自分を解放し、心地よくリラックスできる方法や、ふっと息をつける場所を見つける。更年期こそ、これらが大事なのです。
自分の話で恐縮ですが、私は結婚から23年で、なんと8回も引っ越ししています。全部、パートナーのせいです(笑)。大変ですよ、引っ越しって。ストレスだらけです(苦笑)
でも、ありがたいことに、とても元気に毎日を過ごせています。なぜでしょう?それは良く食べ、毎日「最低でもこれだけは動く」と決めて運動しているからだと思っています。動くとスッキリ眠れますし、なにしろ目覚めがいい。寝る前のストレッチは嘘をつかないと感じています。そして、週末はジョギング!「よくやるよね」と子どもたちにちょっと斜めに見られつつも、走る!自分を見つめる作業をやめないこと、自分を大事にする時間を設けること。私にとってはそれがジョギングタイムなんです。これがあるから、更年期を比較的良好に過ごせていると思います。
女性のみなさん、日々、3秒で構わないので、ちょっとした運動や呼吸法を寝る前のひとときにでも行ってみてください。意外と効果は大きいです!何歳であっても、どんな環境にあったとしても、しなやかな身体と心地よい呼吸をしていれば、なんとかなるものです。
最後に、今を生きる女性の日々のがんばりに、同じ女性としてまずは敬意を。
そして「お疲れ様です!」を伝えて、このコラムを終わりたいと思います。
寝る前におすすめの、血行を促し、ふーっと息をつける動的ストレッチングと静的ストレッチングをお伝えします。
①手足をバタバタさせます。5秒でも10秒でもOKですが、最低3秒はやりましょう。
②息をしっかり吸って、上下にぐーっと3秒、伸びます。そして息を強めに、ふーっと吐いて、一気に脱力します。これを2、3回繰り返しましょう。
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①の動きで手と足をほぐし、血を心臓へ返します。ふくらはぎがむくみやすく、足のだるさを感じる人には特におすすめです。30秒も行うとかなり汗もかきます。そのあとに伸びれば、リラックス、獲得!これを行うだけでも疲れがだいぶ取れます。時間がない方は、②だけでも試してみてください。
こころもカラダも、ゆったり、ワン・ツー・スリー!
明日も、みなさんが元気な1日を過ごせますように。
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■プロフィール:寅嶋静香(とらしましずか)
京都工芸繊維大学研究員。2001年東京大学大学院 生命環境科学系身体運動科学講座終了 PH.,D(専門:運動・スポーツ生理学)
女性と運動の関係を研究するかたわら、「産後こそ、母になったご自身を大切に……」を合言葉に、科学的なエビデンスに基づく、安全・安心を担保しながらの産後の母親支援(健康サポート)を北海道内で12年間実施。このほか、更年期女性へのケア講座なども道内各地で実施。主な著書に「バウンス運動の生理学的基礎~バランスボールで弾む運動の科学的分析~」(ブックハウスHD、2022年8月)
Edit:ナベ子(Sitakke編集部)