2023.08.24

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「自分の好きなもの」の話をするのが苦手。本当は私も”オタトーク”したいのに……【お悩み#44】

は〜い皆さん、ご機嫌よう!「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。

皆さんは、SNSの使い方に何かこだわりとかってあったりするかしら
あたしはと言えば、最近日々の投稿が仕事関係であふれがちだし、そんなに画像加工とかにも明るくないタイプだから、見返しても「なんて淡白な内容なのかしら」と自分で反省するぐらいなんだけれど……。

おしゃれなフレームで彩られた写真や、思わず目を引くリール動画。
そんなきらびやかなコンテンツで溢れた、創意工夫に富む誰かのアカウントがタイムライン上に流れてきたりすると、「あたしもこんなキラキラした投稿とかできたらなぁ」なんて妄想することもあったりします。

自分で自分の「お気に入り」を、全世界に気軽に発信できる、このネットワーク社会。やり方を考えれば、同じような趣味を持つたくさんの人とすぐ知り合えたりするから、とっても便利よね。ただひと昔前ってさ、自分の「好き」を押し出すのがちょっとはばかられる瞬間も、わりかしあったりした気がするのよ。そんな経験ない?

今回のお悩みは、そんな、出しづらい「好き」を抱える方からのお手紙でした。
ご紹介しましょう。

読者のお悩み

おおお、これは正直……。

……めっちゃよくわかる……!!!

まいまいしん!さん、あなたのお悩み、女装の心にクリーンヒットだわ。
まずはお手紙、ありがとうございます。

そうね、まいまいしん!さんもなんとなくその存在を嗅ぎつけている、話題にしにくい、あるいは話題に上らない「好き」の法則性。
あたしね、これきっちりあるんじゃないかって、以前から気になってたのよ。

思うに、以下の3項目に当てはまる趣味って、なかなか人に伝えづらいんじゃないかしら。

その「好き」は少数派である
その「好き」はアングラである
その「好き」はめっちゃ大事である

言いやすい趣味と適宜比較しながら、それぞれ書いてみますね。

その「好き」は少数派である

例えばさ、特定の推しがいたとして、じゃあ周りの人間みんなが好きかというと、絶対そうはならないわけじゃない?(私は関ジャニエイトの村上君のことが、中学生の時に知って以来もうどストライクなんだけど、なかなか同担に出会えないのよねぇ……)。

スイーツが好き!とかってテーマでは、その場が突然盛り上がったりする。でも例えばとあるバンドとかの話題で盛り上がれる仲間って、探さないとなかなか集まらないわよね。
周りに知っている人がいないかもってなると、中々その「好き」も言い出せなくなる気がします。

その「好き」はアングラである

アニメ好きやゲーマーは、今でこそ市民権を得つつあるとはいえ、かつては「え?そんなの好きとか引くわ」「その趣味、周りに言わない方がいいよ」と言われかねない時代がありました。あたしがなりわいとしている女装も、コスプレ文化の浸透や、性が多様であるという認識が広まることによって、なんとか少しポピュラーになってきましたが、眉をひそめる対象とされてしまうことが現在でもあります。
そうした社会の評価が、打ち明けることに対する羞恥心や恐怖につながっているのかもしれません。

その「好き」はめっちゃ大事である

この点がなかなか複雑なのよねぇ。
時に「同担拒否」「ニワカ批判」といった問題にも変わりかねないのですが……この曲が「好き」っていうときの「好き」は、この服かわいいから好き〜って言うときの「好き」よりどこか重たいというか、人によってはその歌詞やメロディーにいろんな思い出をぶち込んでいたりして、がっつり特別だったりするのよね(自分はそういう傾向あり。最近はクリスタルKの「こんなに近くで…」をやたら聞いてます。って関係ないか!)。
推しがいる場合、この出会いは一生もの!って覚悟の人もいるだろうし、ゲームやアニメの世界観に惚れ込んで、裏設定まで全部覚えてます!っていうマニアもいたりする。
人生を賭けている「好き」って、自分の世界をかたち作る大事な要素のひとつ。言いにくくなって当然っちゃ当然なんじゃないかって、あたしは思います。

***

これ以外にも色々、理由めいたものは考えられるのかもしれないけれど、いずれにせよ「好き」を表に出すことを阻む「心のブレーキ」って、どうしてもふとした瞬間にかかっちゃうものよね。

あたしも、例えば自分のバイブルとも言える本(枡野浩一『ショートソング』(2005年))、アニメ(幾原邦彦『輪るピングドラム』(2011年))やゲーム作品(トビー•フォックス「Undertale」(2015年))のことは、SNS発信はおろか、限られた人にしかその想いを語ることができずにいるのよ。う〜ん!もどかしいぃぃい。

まいまいしん!さんのお悩みに大共感するだけでなく、自分もそういえばオタトークしてみたかったんだわ……と、こころのマニアックな部分をくすぐられるような気持ちになっているあたし。
今回もやはり相談に乗るというよりは、一緒に色々迷って困ってどうしよう、というスタンスだったのでした。

あたしなりのAnswer

しかしながら、10代のフレッシュな子からのお手紙に対して(最近、世代関係なくいろんな人から投稿もらえるのよ。とっても嬉しい!)、「あたしもわかる〜」だけの回答で済ませるなんて、30代の大人としてはよろしくない!

てことで、ここからはあたしの考える「オタトークできる相手の見つけ方」、陳腐な答えかもしれないけれど書いていこうと思います。

さて、まいまいしん!さんに、まず伝えておきたい

序盤の内容もこれを言いたくてつづってたわけなんだけれど、あなたの抱える「心のブレーキ」って、どこかしらオタク性を抱えている人間ならば、その大半がその存在に想いを馳せ、どう付き合っていくかを考えたことがある気がするの。

例えば、アニメ化もされた人気漫画『ヲタクに恋は難しい』(2014年、ふじた)の登場人物たちは、「心のブレーキ」を自覚しているからこそ、自らの「好き」以外に周囲に言える趣味(例「マラソン」)を作って、「言える/言えない」の範囲をコントロールしていました。
自分のマニアックな気持ちを理解してくれる相手かどうか、きちんと見極める余地がそれによって生まれるわけです。

あたしもそれと同じように、割と自分の「好き」を投げる相手であったり、「好き」と言える環境や状況を見極めるようにしています。
まいまいしん!さんが感じているように、一見「多くの人は自分の好きなものの話をするのを楽しんでいるように思」えるわけですが、その裏にはもしかしたら、そんな弁別があるかもしれないのです。

だから、まいまいしん!さんは、今の自分の「心のブレーキ」を投げ捨てたりする必要はないと思うの。
むしろそれとうまく付き合っていく方法を見つけていくことで、オタトークできる相手とも出会いやすくなるんじゃないかって思うのよね。

とっかかりやすいところでいくと、お手紙の中でもすでに軽く触れてくれていたけれど、やはりネットを活用するのはひとつの手でしょう。
X(もうTwitterって言わなくなっていくんだろうね……)やインスタグラムの趣味アカウントはもちろん、最近ではイラストや小説投稿ができるアプリ、特定の趣味に限ったSNSなど(変わり種で言うと「激辛料理好き」や「短歌詠み」のためのSNS、あたし入れてます)、「ここならブレーキをかけずに「好き」を出せる」というウェブ空間が、様々な人たちによってどんどん生み出されています。

これは利用しないって選択肢無いはず。
まいまいしん!さんも積極的に使って、同じ「好き」を持つ人たちとどんどんつながってみてはって思うんです。

もちろん、ネット上の出会いややり取りは、リテラシーあってこそのこと。
それに、直接趣味を語り合えるリアルの友達ができるならば、それに越したことはないと個人的には思います。
でも、「ここなら話して大丈夫」という環境を見つけることも、それと同じぐらい大事。

その環境下で自分の「好き」を思いのままに話せるようになれば、自分の気持ちをどんな人が受け止めてくれるのか、どんなふうに話して発信をすれば伝わるのかなど、見極められるようになるはず
オタトークも次第にこなれたものになり、周りにシェアしやすいものになっていくんじゃないかしら。

好きな人やものの話ができるのって、やっぱり楽しいのよね。人生にうるおいも生まれるし、オタク仲間ができると、周囲から「好き」に関する新しい情報が舞い込みやすくもなる。
まいまいしん!さんには、「心のブレーキ」とも上手に距離を保ちながら、ぜひそんな喜びを経験してみてほしい。

マニアックな「好き」を持つ1人の人生の先輩として、あなたのこれからを応援していますね!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:ナベ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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