2023.02.22

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【相談】優柔不断すぎて自己嫌悪になります。昔に比べて、決断力が弱くなった気がします。

は〜い皆さん、ご機嫌よう!「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。

三十路に突入してもうすぐ3年。なんだか最近急に歳を感じるようになってきたあたし。
「何言ってんのよ!まだ30そこそこなんて全然若造でしょうが!」というお叱りの声も飛んできそうですが、でもね……本当に体力の減りというか、20代の勢いが無くなってる自覚が出てきたのよ。

24歳からドラァグクィーンとしてバーのカウンターに立つようになり、27歳で「7丁目のパウダールーム」の店長に。そこから割と突っ走り気味に「よおおおおし全員飲むわよおおおお!!!!」と、高めのテンションで乗り切ってきたところもあるんだけれど……。
ここしばらくヤバいの。あのね、知らない間にお店で寝ちゃうのよ。←

嫌よねぇ。なんかさぁ、飲み屋で働くようになってから、別段もう“記憶が無くなる”ってぐらいなら全然「あらまたやっちゃった!?」ぐらいで流せるようになってきたんだけれど(いや流すなよってツッコミは一旦無しね笑)。
「よ〜し営業終わったゾ、片付けるか!」と決意した刹那、目覚めたらソファの上で土下寝してて、しかも4時間後にワープしていたりってのが頻発するようになってきたのよ。
こないだなんて3日連続よ!?もう普通に恐怖。

嗚呼……年齢を重ねると、着実に人って変わっていくのね……」と実感せざるをえないここしばらくなのですが、可能な限り老け込みに抗えたらなぁなんて思ったりもする、女装9年目の人生を送っております。笑

そんなここしばらくだったのですが、いただいた投稿の中にも加齢に悩む人がいたァ!
今回はこちらを紹介いたしましょう。

読者のお悩み:物事を決断するのが苦手になった。昔に比べて優柔不断になってしまった気がする。そんな自分が嫌になることも。どうすればいい?

わおわお。「私はどうしてしまったんでしょうか」ってセリフをはじめ、真剣に悩んでいることがはしばしに垣間見える文章ね。すりりさん、お手紙送ってくださってありがとうございます!

あたしが冒頭で書いたのは、体力の低下パターンでしたが(ほんっとBBAくさいお悩みだわぁ……ごめんなさいね……笑)。
すりりさんの場合は、言うなれば気力の低下パターンってやつかしら。

これもアルアルだよねぇ。
だってさぁ、そもそも行動のあり方を決めたり全体の方針を定めたりするのって、「何かをする」ってときにはどうしても必要になるけれど、それって結構なパワーを消費するというか、場合によっては自分のメンタルにかなりの負荷がかかることだと思うの。

なぜってこれ、たいてい単に決めれりゃそれでいいって話でもないもんね。
「〇〇にしよ!」って発案した身には責任が伴うというか、何かあったときに「あんたがこれにしようって言ったんじゃん」って言われちゃう可能性あるというか。
それに、関係者の誰からも文句出なかったとしても、「もしかして不満があったんじゃないか」って、人によっては後から想像しちゃったりもするかもしれないし。
うん、実際いろいろめんどくさいわよ、そりゃ(だから、すりりさんは「決断を周りにゆだねてしまうズルい自分がいる」と書いてらっしゃるけれど、あたしとしてはこの部分「そりゃゆだねたいよねわかる〜!」って共感しかなかったです)。

そんなそもそもわずらわしい作業なのに、人生頑張って生きてたら、歳を追うごとにだんだん心もそれなりにすり減ってくるというか。
粉々とまではならなかったとしても、誰もがちょっとずつくたびれてくるものです。何かに向かう余力も徐々に少なくなってきますよね。
その状態で「よし!これでいくぞ!」って積極的な判断、なかなかしたくてもできなくなったっていうのは、当たり前のことなんじゃないかなと個人的には思います。

あたし自身、7丁目のパウダールームの店長としていろんなことを決めて「みんなでこうしていこうか」ってスタッフにアナウンスし、周年やバースデーなどの計画を練って実行したり。
関わって6年目となるさっぽろレインボープライドの取り組みのなかでも、要所要所で決断を求められるし、他にも講演会の内容やクラブイベントでのショータイムの演目など、もうさっさと決めて「腹をくくるっきゃねえ」ってなる場面まみれなんですが……。
これがすりりさんと同じで、年々方向性決めるのに躊躇するようになっちゃって、だんだん「これだ!」ってなるまでのスピードが遅くなっていってる気がすんのよねぇ。とほほ……年齢には勝てないもんなのかしらね、本当に他人事じゃないわぁ。

でも案外ね、すりりさん、同じ事柄に悩む人間としてアドバイスしたいんだけれど、そのせいで自己嫌悪になっちゃうっていうのを防ぐ道も、あたし実はあると思うのよ。
てことでこちらの相談には、2つほど打開策というか、実際自分がやってみておすすめだった方法を投げかけてみたいと思います。

あたしなりのAnswer

その2つっていうのが、こちら。

どうかしら、すりりさん。
「さすがにバトえんは」ってなっちゃったかもしれないし笑、「弱みを見せるのって苦手だなぁ」とも思ったかもしれないわよね。
それはそれで当然。だけど、もしそんな抵抗感を抱いたとしたら、ちょっと胸に手を当てて考えてみてほしいんです。

……実はね、この2つの打開策は共通点を持ってるの。
それはね、「何かを“できない”自分を認めて、今までの“できたはず”な自分像を手放す」ことが前提にあるってことなのよ。
要は、きっちり諦めてしまうことが、その肝になっているのよね。

かつてのように即断即決できなくなってしまう。可能だったはずのことが不可能になってしまう。それは間違いなくしんどいことです。
ましてや、そんなおのれの衰えを直視するなんて作業、誰しも避けるもの。
だって、まるで自分のことを一瞬バチバチのダメ人間であるかのように見なさなきゃいけなくなるわけだしね。自己嫌悪ここに極まれり、って感じになっちゃってもおかしくない。

でもね。
中途半端な自信と自己疑念のはざまで「どうしてこんなこともできなくなっちゃったんだ」って落ち込んだり、「まだこれぐらいできなきゃダメだろう、頑張れ自分」と余計なアクセルをふかして、疲れて動けなくなってしまうぐらいなら、すっぱり「おいら老けたらしいわ!こりゃできねえぞ!」と開き直っちゃう方が、その後自分を責めることも無くなると思うのよね(あたしはそうでした)。

そうやっておのれの弱さを認めてしまえば、そこから先は息がしやすくなってくるはず。
他の人に打ち明けることができれば、「ごめーん助けてくれん?」って言いやすくなっていくと思うし(職場の人も恋人も、あなたのことをきちんと想ってくれているなら、きっと受け入れてくれるでしょう)、自分の限界が見えた分「これは逆に任せて!」という生産的な申し出も可能になってくる(魅力的な選択肢を複数リサーチできるって、経験の積み重ね、人生の歩みがあってこそ。それに、なかなかできることじゃありません)。
言ってみれば、「できないこと」をきっちり受け止めることで、「できること」が目の前に広がるようになってくる気がするんです。

なんなら、改めて「苦手だけど決めなきゃいけない」ような時も、ちゃんと「苦手だもんな〜どうなっても仕方ないわ」という諦念とともに挑めば、その後うまくいかなかったとしても、自分を責める気持ちは軽く済みます。
「なんかそんな気分だからこれにしてみっかな」「サイコロで決めちゃお〜ん」なんて軽いノリでいることだって、だんだん許せるようになってくると思うのよね。

あたしの尊敬する作家の森見登美彦さんは、代表作『四畳半神話大系』(2005年/太田出版)の中で、こんな言葉を残しています。

__「我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である」(登場人物•樋口のセリフより)

『四畳半』のストーリーの主軸とは、ちょっとニュアンスが違うかもしれないけれど。
これ、本当にそうだと思うのよ。すりりさんにとっても、あたしにとっても。

だから、もう「昔はもっと」なんて思わずに、思い切って自分の今の状態を「そんなもんだよね」と肯定してみてください。
そこからきっと、豊かな人生の物語が見えてくるはずだから。

決断できなくていい。そんなあなたでいい。
そう考えてみることをきっかけに、すりりさんのもやに少しでも晴れ間が差すようにと、同じく「歳には勝てないなぁ」と思い始めた身として、西創成のカウンターから切に願っていますね。

ま・と・め♡

というわけで、今回は年齢による気力問題について、自分なりの対策も交えながらお話しさせていただきました。
いやぁ、人間は時間と共に生きてる存在だから、どうしても若さとかそれに基づくパワーって、いつまでも手元に置いとけないもんよねぇ。
その代わりに年齢を経るごとに、経験値や技術、人としての奥深さみたいなものを手に入れていくのかもしれません(そうだったらいいなぁ)。

こうなったらどっちかっていうと、つまらないよりは素敵な年のとり方をしたいもんよね!
あたしもいつまで今と同じ生活を送っているのか、実のところはちっともわかりませんが、何歳になっても「そう、これがあたし、これでバッチリ!」と納得していられるような、そんな生き方をしていたいなぁと思っています。

みんな〜!一緒に素敵な人生、これからも作っていくわよ〜ん!
ではではまた次回。Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:ナベ子(Sitakke編集部)
***
満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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