2023.08.17
みがく毎日がんばる“わたし自身”を、いたわってあげませんか?
ココロとカラダをセルフケアするためのTipsを、簡単な運動と共にゆるっとご紹介。北海道内を中心に、25年以上に渡って「女性の健康と運動」を研究・サポートしてきた、寅嶋先生にご提案いただきます。
こんばんは、とらしまです。
更年期を深掘り中のこのコラムですが、更年期って、ドクターでもなかなか断定することが難しい、微妙な、なんとな~く不安定な時期なんです。不調を抱える本人も、「ただの疲労?更年期?病院にかかるほどのこと?何科にかかればいいの?」と判断に困り、結局何もしない……なんてことも。
でも、そこで自分をケアすることが、とても大切なことだと、更年期真っただ中の当事者として思っております。
今回は、さまざまなエビデンスや、私がお会いしてきた更年期女性たちの声をベースに、更年期の不調を乗り切るために役立つ情報を共有できればと思います。
前回もお伝えしましたが、更年期は女性ホルモンが大幅に減少していく時期。閉経がやってくるし、骨密度も下がっていくし、内臓脂肪もつきやすくなります。腰や肩のだるさが増し疲れやすくなり……、と、正直、あんまりうれしい話が聞こえてこない時期です。
でも、そのはずなのに、みなさん、とっても我慢強い!道内で7年ほど、更年期女性を対象にした健康講座を行っていたのですが、「我慢でどうにかなる」を超え、「もはや医療的な治療が必要」というレベルでも、病院に⾏っていない⼈がたくさんいたのは本当に衝撃的でした。痛みや尿漏れ、だるさがあっても、疲労がピークを越えていても我慢できちゃう。社会的責務も大きくなるし、我慢強くなっちゃう年代なのかもしれません。でも、毎回、「みなさん、強すぎます!本当に、どうかどうか大事にしていただきたい……」と感じておりました。
では、自分を大事にするとは、どういうことでしょうか。最初のステップは、「今、自分の体はこんな状態なんだ」「こういう時に、こういうふうな辛さが出るんだ」ということを把握することです。「年なの?更年期なの?」と考えるよりも、「今の体は、客観的に見てどんな状態か」を知るようにしていただきたいなと思います。なぜなら、自分の状態を正しく知ることで、適切なケアもできるようになるからです。
健康講座を行う中でも、自分の体の状態をしっかりチェックしていない方が、たくさんいらっしゃることが気になっていました。わかっているようでわかっていないのが自分の体。以下の、2つの簡単なチェックで、「見える化」しましょう!
vol.7で紹介した「更年期指数チェック票」を使ってチェックしてみましょう。
表内の点数は一定ではなく、「冷え」「眠りの浅さ」「イライラ」などの項目は点数が高くなっています。理由は、これらが更年期の方に大変よく見られる、特有の症状だから。つまり、それらの数値が高いと、つらさが更年期によるものである可能性が高くなります。
また、婦人科の医師いわく、「イライラ」と「くよくよ」が交互に来るのは更年期の特徴だそう。「イライラ」と「くよくよ」の項目がいずれも「強」であれば、更年期の症状が出ている可能性はとても高いと考えられるでしょう。
上の図は、理学療法士さん、看護師さん等によく使われている「痛みの表現を言語や数値ではなく、人の顔の表情によって評価するスケール」、通称「フェイススケール※」です。自分の心もちに近い表情を選ぶことで、主観的に痛みを評価できます。チェック時には誰にも遠慮はいりません。自分自身の素直な気持ちで回答しましょう。
この2つのチェック、できれば1週間に1回はしてみましょう。定期的に行うことがポイントです。私は2、3日に1回、あとは、週末のランニングの直前にチェックしていますが、続けているうちに、調子の変動の傾向がつかめるようになりました。健康講座の参加者の中にも、「このチェックで生活リズムや仕事の繁忙期と、不調の波が一致していることがわかった!」という方がいました。
調子がいつもと違うと感じる時は、3日間など、ある程度連続してチェックを続けてみましょう。高得点が連続して続くようなら、ぜひ病院へ。健康講座でも、チェックで高得点が続いたことが受診のきっかけになったケースが数件ありました。「肩こりがひどい」というので試しに肩を上げてもらったらまったく上がらず、「こんな状態で何年も放置していたの!?」と驚くような状態の方もいました。その方にはすぐに外科を紹介。リハビリへとつなぐことができました。
自分の調子を「見える化」した結果、得点が高かったり、その状態が一定期間続いているような場合には、ぜひ治療を受けてくださいね。受診するかどうかの判断の目安は、10日〜2週間ほどです。
さて、受診。ここのハードルがまた高いと、みなさんおっしゃいます。「行こうにも、不調がいっぱいでなんだかよくわからないから、何科へ行けばいいのかわからんのよ!」という声も、健康講座でよくお聞きしました。
心の波が激しい場合、ストレスの原因が多岐にわたっている場合、疲れやすさやだるさなどのさまざまな不調が同時にある場合は、まず婦人科へ足を運んでみましょう。特定の症状が強く出ている場合は、専門の診療科へ行くのがベター。例えば、腰痛や肩こりなどがかなり強い場合は整形外科へ、という具合です。
その際に提案したいのが、「上記のチェック表を医師に見せる」こと。感じているつらさなどの個人の主観的感覚を、第三者へ伝えるのは難しいもの。不調の程度や期間が数値というかたちで「見える化」されていると、説明しやすいし、伝わりやすいと思います。
婦人科以外の診療科の場合は、更年期の症状があるかどうかで治療内容が変わったりもします。更年期の可能性があることを医師に伝えることは、適切な治療を受けるために必要なこと。恥ずかしがらず、ぜひ、相談時には「自分の体の状態を伝える資料」として、見せてみましょうね。
身体チェックを兼ね備えた、不調を起こしにくくなるストレッチングをご紹介します。更年期健康講座でも必ず行っていた、下半身のストレッチングです。
前屈、後屈いずれも、DまたはEの結果であれば病院へ。腰痛などをしっかり診てくれる整形外科を受診しましょう。C以上ですが痛みやだるさがあり、他のチェックでの得点も高いという場合は、婦人科へ行ってみましょう。どちらの運動も、無理を押して行うと逆効果。できる範囲で、が大切ですよ。
①足を肩幅くらいに広げます。
②少しだけ反動をつけて、軽く膝をまげて、ゆるやかに1、2、3と前に屈みます。
③おへそをのぞきながら、ゆっくりと起き上がります。
痛みやだるさがひどい場合は、軽めの前屈のみで十分です。身体がガチガチな方ほど、足腰をすっきりしなやかにするために、繰り返して行ってください。
【チェック結果】
A 余裕をもって床に手がつく
B 指先がぎりぎり床へつく
C 指はつかないが、足首はつかめる
D 足首はつかめないが、前に屈むことはできる
E 前に屈むことができない
①足を肩幅くらいに広げます。
②しっかり両手で腰を支えながら、1、2、3とゆっくり呼吸をし、可能な範囲で後ろへ反ります。
③ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
後屈は、無理して行うと腰や背中をいためるので要注意。前屈を先に行って、腰回りを伸ばし温めてから、ゆっくりとできる範囲で行いましょう。軽く膝を曲げると行いやすいです。
【チェック結果】
A 後ろの壁と床が余裕で見える
B 後ろの壁が見える
C 後ろの壁は見えないが天井なら見える
D 反るのが少しきつい
E 反ることができない
こころもカラダも、ゆったり、ワン・ツー・スリー!
明日も、みなさんが元気な1日を過ごせますように。
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■プロフィール:寅嶋静香(とらしましずか)
京都工芸繊維大学研究員。2001年東京大学大学院 生命環境科学系身体運動科学講座終了 PH.,D(専門:運動・スポーツ生理学)
女性と運動の関係を研究するかたわら、「産後こそ、母になったご自身を大切に……」を合言葉に、科学的なエビデンスに基づく、安全・安心を担保しながらの産後の母親支援(健康サポート)を北海道内で12年間実施。このほか、更年期女性へのケア講座なども道内各地で実施。主な著書に「バウンス運動の生理学的基礎~バランスボールで弾む運動の科学的分析~」(ブックハウスHD、2022年8月)
Edit:ナベ子(Sitakke編集部)
※家入章.(2023)変形性股関節症における徒手療法の効果.徒手理学療法,23 (1);67-74.