あの痛ましい衝突事故から7月18日で1か月が経ちました。
6月18日、北海道八雲町の国道5号線で、トラックと都市間高速バスが正面衝突。
5人が死亡しました。
事故から1か月を迎える現場では、警察の捜査によるものとみられるチョークの跡が。
そして歩道には花や飲み物が供えられています。
警察は、トラックの運転手がブレーキをかけないまま、対向車線にはみ出したとみて、トラックのドライブレコーダーを押収し、分析しています。
また、ステレオカメラでとった現場や車両の写真から、立体の図面をつくり、どのように衝突したか再現するなどして、調べを進めています。
一方、7月上旬、北海道開発局などの関係機関が、今回の事故を受けて緊急対策会議を開きました。
ここで注目された、ある安全対策に迫りました。
連載「じぶんごとニュース」
事故現場を含む、およそ14キロの区間は、事故が相次いだことから10年前に「事故危険区間」に選定され、対策工事が始まりました。
しかし、今回の事故現場は、選定後に大きな事故がなかったため、工事に着手する優先順位が下がっていました。
7月6日から7日にかけ、事故現場を含むおよそ500メートルの区間で安全対策工事が行われました。
道路のセンターラインに、深さ1.2センチの溝を15センチ間隔で刻んでいく 「ランブルストリップス」 という加工です。
この上をタイヤが通ると、音と振動が車に伝わり、ドライバーにセンターラインを踏んだことを警告する仕組みです。
事故危険区間14キロのうち、工事が終わっていない5.5キロについても、早期完了を目指しています。
では、どれくらいの効果があるのか…開発をした寒地土木研究所で、HBCの堀内大輝(ほりうち・だいき)アナウンサーが、ランブルストリップスを体験しました。
「結構ガタガタガタッと、背中にもハンドルにも体に振動がきますね。車線をはみだしたなっていうのは、ある程度の距離があれば一発で分かりますね」と、振動を実感したようです。
寒地土木研究所の平澤匡介統括主任研究員は、「よほど熟睡している人でなければ、何かを踏んだということは認識できると思う」と話します。
実際に設置した道路では、センターラインを踏んだ車が、すぐに車線の中央に戻る様子が。
居眠りやぼんやりした状態のドライバーも、音と振動による警告で、対向車線にはみだす前に、危険に気づくことができます。
ランブルストリップスを設置する前と後で比べてみると、正面衝突事故がおよそ54%減り、死者数も、およそ68%減少しました。
しかし、この溝… 雪が降れば、音や振動が出なくなってしまうのでは…?
そんな疑問について、先述の平澤研究員は「雪が降って区画線が見えないような状態でも、音と振動の効果はある」と話します。
「旭川より南であれば、大体は 冬でも効果がある。 加えて、ラバーポールや金属鋲はどうしても除雪の邪魔になるが、路面を削ることは 除雪に対して何ら影響がない 」と「ランブルストリップス」のメリットも教えてくれました。
さらに、工事の費用も1メートルあたり、わずか1500円。
中央分離帯を作ると1メートル24万円かかるので、 コストは160分の1 に抑えられます。
ただ、こうした対策だけでは、もちろん事故は防ぎきれません。
あくまで、 ドライバーの安全運転が何より大切 です。
今回、安全対策をする指針になった「事故危険区間」は、北海道内だけでも1429区間あります。
その一つである、道南の北斗市七重浜にある国道228号線では、3年前にトラックと自転車が出会い頭に衝突する死亡事故がありました。
北斗市七重浜にある国道228号線はおよそ800メートルの区間で、2017年からの5年間に、あわせて7件の交通事故が発生。
2023年3月に事故危険区間に選定されました。
一方、旭川市神居町にある国道と道道の交差点では、すでに対策が完了しています。
死亡事故の発生などを受け、以前はなかった信号機と横断歩道、右折・左折の専用レーンが設けられました。
対策を終えた2009年以降は、重大事故が発生していません。
このように、事故危険区間では対策により事故が減る効果がでています。
しかし、どのくらい対策が完了しているかというと、全体の45%。
どこの区間から対策をしていくべきなのか、難しい問題ですが、今回の事故の教訓を、再発防止につなげていく必要があります。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年7月17日)の情報に基づきます。
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