クマ対策を全道に広げたい。
知床のホテルと、札幌のレストラン、HBCが協力して、「楽しさ」を原動力にするイベントを開催しました。

連載「クマさん、ここまでよ

札幌のアウトドアレストラン「mountainman」。

住所は非公開!ホームページに書かれた、暗号=「42°59'13.9"N 141°21'38.6"E」をヒントに、探した人だけがたどり着けます。

安全で楽しい場所を守るため、6月17日、「クマ活」の開催を決めました。

「クマ活」は、知床のホテル「北こぶしリゾート」が、ウトロ地区で行っている活動。
草刈りなどクマの住宅地への侵入を防ぐ対策をしたり、クマについて学んだりします。

でも、クマとの共存は全道のテーマ。

札幌市が設置したカメラに映ったクマ(札幌市西区西野・6月17日)

これは、17日に札幌・西区西野で撮影されたクマ。この17日・18日の週末だけで、西区で3件の目撃がありました。
札幌では、去年のおよそ1.5倍のペースでクマが出没しています。

そこで、「クマ活」を全道に広げたいと、「北こぶしリゾート」と、「mountainman」、HBCのサイト「クマここ」が協力して、「クマ活 in SAPPORO」を開催しました。

北こぶしリゾートで「クマ活」を担当する村上晴花さんと、「クマここ」レポーターを担当するHBC波多野裕太アナウンサー

mountainmanにはクマが出たことはありませんが、これからも出ないように、「クマが出る前の対策」に取り組みます。

レストランスペースから少し山側へ歩くと、笹やぶが茂った場所がありました。
普段は意識しないかもしれませんが、みどり豊かな札幌では、これくらいの笹やぶは、いろいろな場所にあります。

そのとき、笹やぶの奥が、ガサガサと揺れました。

出てきたのは…人!

※近くにクマの専門知識を持つ方を含め、人がたくさんいる状況で行っています

北こぶしリゾートの村上晴花さんは、「普段は気にしていなかった笹やぶでも、人すらすっかり隠してしまうのがわかると思います。クマは四つん這いになったら1メートルほど。さらに茶色い毛皮をまとっていますから、もっと気づきづらい」と話します。

北こぶしリゾートで「クマ活」を担当する村上晴花さん

クマは、身を隠せる背の高い草や川沿いを好んで移動します。
おととし6月、札幌・東区で4人がけがをした事故でも、クマは川をつたって住宅地に迷い込んだとみられています。

札幌・東区の住宅地に迷い込んだクマ(2021年6月18日)

そこで、有効な対策が草刈り。
見通しをよくすることで、クマが住宅地に迷い込むことや、ばったり人と出会って事故になることを防ぎます。

「クマここ」担当のHBC波多野裕太アナウンサーは、草刈り初体験!
「単純な作業に見えて、みんなとやるのが楽しい。スポーツと通じるものがありますね。きょうはいい汗がかける!学びの汗がかける!」と笑顔を見せます。

波多野アナウンサー

30人ほどで、会話も楽しみながら草刈り。
たった30分で、笹やぶに隠れていた川が見渡せるようになりました。

草刈り前は視界一面が笹やぶで、奥に川があるのはまったく見えない

たった30分でスッキリ。草刈り後には川が見渡せるようになった

参加した人は、「達成感がありますね。体を動かしているのもあって、大変というか面白いのほうが大きい。クマは出ちゃうと駆除になっちゃうこと多いが、人間もクマも被害を減らすために、事前に原因をつぶすのはいいと思う」と話していました。

「家のまわりにもこんな笹やぶがある」と気づいた参加者も。「これだとクマが来ちゃうなって、草を刈っていてなんとなく伝わってきた」と話します。

体を動かして考える、クマとの共存。

木陰で輪になって座り、IT関係や旅行関係、小学生に大学生…それぞれの立場での想いを語り合いました。
最年少・8歳の参加者が「またほかの対策にも参加してみたいと思いました」と率先して意欲を見せ、保育士は「小さい子どもにもクマのことや対策を伝えていきたい」と自分にできることを考えてくれました。

ピンクのつなぎを来ているのは、札幌でクマ対策に取り組む学生グループ「困ったくま」。

札幌藻岩高校在学中に、授業をきっかけにクマに関心を持ち、草刈りや啓発のイベントを企画してきた5人組です。
ことし3月に高校を卒業し、それぞれ別の大学などに進みましたが、今でもクマ対策への関わりをつづけています。
この日は3人が参加してくれました。

3人は、今後のクマ対策について笑顔で語ります。
「これまで対策に関わったことがない人でもできる、身近な対策はある。みんなで取り組んでいきたい」
「活動の中で小学生にクマについて伝えたときに、『クマ鈴をランドセルにつける』と言ってくれた。そういう小さな積み重ねで、クマ対策が当たり前になったらいいな」
「きょうの草刈りでも、どうしてクマが住宅地に出てくるかがわかったと思う。それを一人ひとりが知って意識することで変わってくると思うので、知ることが大事」

北こぶしリゾートの村上さんは、「困ったくま」に以前から会いたかったそう。
「クマ対策はボランティア精神でやるのが主流だったように思うけど、高校生がピンクのつなぎで、楽しそうに、かわいく活動している姿に、すごいなと思っていた」といいます。

村上さんが大切にするのも、「楽しさ」です。
クマが怖いと思っている人と話すときは、めちゃくちゃ楽しそうにクマの話をします!怖がる必要はあると思うんですけど、『会ったら必ず襲われる』などちょっと曲がった怖がり方ではなくて、もうちょっと知ってほしいことがある」

義務感ではなく、クマが魅力的な動物で、「大好きだから」活動しているという村上さん。
「共存できる道があるんだったら、行動したい。ひとりで頑張りすぎずに、人がつながって解決できることがあると思う。きょう感じたことが、この後のみなさんの生活で何かのきっかけになったら嬉しい」

動いて、考えた後のランチのおいしさは格別!

mountainmanでランチ。初対面の参加者同士も自然と相席し、談笑していた

義務感ではなく、「楽しさ」を原動力に広げるクマ対策です。

今回のイベントでは「お楽しみプレゼント」として、「35magazine」からクマ柄のかわいい水、「お菓子GAKU」からケーキ缶を協賛いただき、参加者に無料でプレゼントしました。

実はこのケーキ缶にも、中にクマが隠れているんです…。
くわしくは、次回の記事でお伝えしています。
⇒【「クマ」が隠れたケーキ缶?!自動販売機で買える、かわいい・おいしい北海道スイーツ

***

「楽しかった」「また参加したい」という声をいただき、たくさんの笑顔が見られて、とても嬉しかったです。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

今後も道内各地のイベントや対策の情報は、Sitakkeと連携するサイト「クマここ」のイベントページでご紹介していきます。

連載「クマさん、ここまでよ
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容はイベント開催時(2023年6月17日)の情報に基づきます

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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