2023.04.29
深める「レザーのカシミヤ」とも言われる、エゾシカの皮。
「かつてはエゾシカの皮も輸出していたほどすごく使われていて、また新たな活用の仕方を提案出来たらいいなと思います」
そう話すのは、札幌のデザイナー・高瀬季里子(たかせ・きりこ)さんです。
札幌発の新たなファッションブランド「HADACA 肌鹿(ハダカ)」の服に込められた、「シカとの共生」とは…?
連載「じぶんごとニュース」
高瀬さんは、2008年から「24KIRICO」のブランド名で、エゾシカの革を使ったバッグなどを製作し、販売しています。
2023年2月、写真家の佐々木育弥(ささき・いくや)さんと、タッグを組んで、エゾシカの革を使った洋服ブランド「HADACA 肌鹿(ハダカ)」を立ち上げました。
高瀬さんは、「防寒にも適していますし、繊維に空気を含んでいる素材なので、本当に体を優しく包むというか、柔らかくて体に馴染んでいくんですよね」と話します。
佐々木さんは、ブランドのイメージの映像について、「『HADACAって肌の鹿なんだ』って気づいたときに、頭に残る強いメッセージがあると思ったので、モデルに冬の寒い中、肌の上に鹿の肌をまとうっていう絵を残したくて」と話していました。
高瀬さんがエゾシカにこだわるのは、「レザーのカシミヤ」といわれるほどの柔らかな素材の良さだけではありません。
有効活用されないまま、排除されるエゾシカの現状を、ファッションを通じて伝えていきたいという思いです。
高瀬さんは、「森の中で頭数調整だけされて殺されているっていうのは、多分みなさん知らないと思いますし、現状を伝えるだけじゃなくて、製品としてもっと美しいものに変えていけたら」と話します。
道内のエゾシカの推定生息数は、2011年度の77万頭をピークにゆるやかに減少し、ここ10年ほどは横ばいです。
これは、道が1998年から個体数管理をはじめ、現在、年間14万頭ほどを目安に捕獲が続いているからです。
しかし…それでも、牧草や稲などを食い荒らす農業被害は続いており、2021年度でその額は、およそ45億円に上っています。
一方、捕獲されたエゾシカのうち、食肉処理施設に持ち込まれるのは2割ほど。
残りの8割は、ハンターが、一部処理して加工する以外は、多くが廃棄されています。
高瀬さんは、「食用に流通されている動物の皮は、普通に活用されているのに、野生動物は本当に頭数調整だけされて廃棄されているっていう状況に、やはり少しでも活用してあげたい」と話していました。
道内には、シカ皮をなめす工場がなく、革製品として加工するには、道外の工場に持ち込むしかないなど、大きなハードルもあります。
高瀬さんのブランド「HADACA」には、これまでの洋服の常識を覆す特徴があります。
革に空いた、2つの穴。
「銃弾が入って、抜けた痕」だといいます。
シカどうしのケンカや、狩猟で出来た傷やシミを、そのまま生かしたデザインなのです。
高瀬さんは、「高級ブランドが使っている革は、傷がないのがいいと、綺麗なものを皆さん求められる時代がずっと続いてきた。上に加工をかけちゃえば、傷とかも全部隠すこともできるんですけど、この傷一つ一つがすごく面白い」と話していました。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集: Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年4月12日)の情報に基づきます。
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