2023.03.30
みがく毎日がんばる“わたし自身”を、いたわってあげませんか?ココロとカラダをセルフケアするためのTipsを、簡単な運動と共にゆるっとご紹介。北海道内を中心に、25年以上に渡って「女性の健康と運動」を研究・サポートしてきた、寅嶋先生にご提案いただきます。
こんにちは、とらしまです。今回から数回にわたっては、「妊活」をテーマにお話ししていこうと思います。
私が行ってきた産後ケア講座への主な参加者は、出産からまだそれほど日のたっていない方々ですが、すぐに第2子を……と考えている人も多くいらっしゃいます。ただ、講座を長年やってきましたが、「妊活」というこの言葉が出てきたのは結構最近のことです。
この言葉が生まれた背景には、近年、「男女問わず、年齢増加に伴って妊よう性(妊娠する力)が低下する傾向にある」「卵子や精子も老化する」ということが医学論文(高橋,2022 ※1)で示され、世間にも知られてきたことがあるのかもしれません。妊娠には、どうしてもタイムリミットがあります。
でも、だからといって「急げ急げ」は禁物。ココロにもカラダにも、焦りは悪影響しか与えません。むしろ穏やかな気持ちで、ご自身のライフスタイルも大事にしながら考えていただけたらいいな~、と私は感じております。
さて、妊娠のしやすさを高める要因の一つが、実は運動です。
2012~2022年頃までの間に、妊活に関する医師による著書は60冊弱出版されています。その7割ほどで、妊活にあたっての推奨事項として「適度な運動実施」、「規則正しい睡眠」、「肥満になりにくい栄養バランスの良い食事」があげられています。
早歩きなどの「ちょこっときついと感じる運動」は、ほぼ全ての細胞の中にあるエネルギー源であるミトコンドリアを増加させてくれます(中野ら,2019 ※2)。
これが、妊活に必要な「さまざまな細胞たちの元気度」へも関わってくるんですね。なお、ミトコンドリアの機能不全は、男性不妊と関連している可能性があるという研究結果があります(Nakada, et al, 2006 ※3)。妊活は女性主体で行うイメージが強いですが、片方だけでなく、「夫婦が一緒になって健康維持する」努力がやっぱり大事で、妊娠にもつながりやすくなるといえるでしょう。
歩くことは、お金もかけずに、今すぐトライできる妊活の一つ!
雪が溶けてきたいま、まずは歩きやすいシューズを買って、パートナーとウォーキングへ出かけてみませんか。
寒い日や忙しい時は、今回ご紹介する、家の中でできる「その場歩き運動のプログラム」をどうぞ。ちょこっときついですが、「ミトコンドリア、増やそう!」と声を掛け合って、二人でチャレンジしてみてください。
①その場足踏み20回。膝はできるだけ90°になるように上げて
②腕を振りながら、両足を交互に、少し前に出しては戻る動きを20回。足を前に出すときに、かかとを床にタッチします
③その場で、足を閉じての軽いスクワットを10回
④腕を振りながら、両足を交互に、少し後ろへ出しては戻る動きを20回。足を後ろに出すときに、つま先を床にタッチします
①〜④をできれば2~3周行いましょう。128~135くらいのテンポの曲(YOASOBIの「夜に駆ける」で130くらいです)に合わせて行うと、リズミカルで心地よい有酸素運動になります。
※1 髙橋俊文.(2022).「不妊症を生物学的・社会学的に探求する」.福島医学雑誌,72 (1);1-9.
※2 中野大輝,ほか.(2019).「運動と骨格筋のミトコンドリアダイナミクス」.順天堂スポーツ健康科学研究9(3); 97~103.
※3 Kazuto Nakada, et al. (2006). Mitochondria-related male infertility. Biological Sciences, 103 (41); 15148-15153.
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こころもカラダも、ゆったり、ワン・ツー・スリー!
明日も、みなさんが元気な1日を過ごせますように。
ライター:寅嶋静香(とらしましずか)
京都工芸繊維大学研究員。一般社団法人フィジカルケアラボ 理事。
2001年東京大学大学院 生命環境科学系身体運動科学講座終了 PH.,D(専門:運動・スポーツ生理学)
女性と運動の関係を研究するかたわら、「産後こそ、母になったご自身を大切に……」を合言葉に、科学的なエビデンスに基づく、安全・安心を担保しながらの産後の母親支援(健康サポート)を北海道内で12年間実施。このほか、更年期女性へのケア講座なども道内各地で実施。主な著書に「バウンス運動の生理学的基礎~バランスボールで弾む運動の科学的分析~」(ブックハウスHD、2022年8月)
Illustraion:まるいみさき
Edit:ナベ子(Sitakke編集部)