2023.02.06
深める去年、知床半島沖で発生した観光船の沈没事故を受けて、海難事故の際にいち早くSOSを発信するシステムの実験が羅臼町で行われました。
システム開発のきっかけは、身近な人の海の事故でした。
1月23日、知床の羅臼町では、地元の漁師や観光船の事業者らが集まり、新しい海難救助システム「よびもり」の実証実験を行いました。
「よびもり」は、船から人が海に落ちた際に、首から下げた端末のボタンを押すだけで、SOSが発信できるシステムです。
ボタンを3秒間押すと、システムに登録されている仲間の漁師や家族などのスマートフォンのアプリに、GPSの位置情報が送られ、救助を求めることができます。
実証実験では、要救助者に見立てたブイに「よびもり」をつけて海に流し、アプリの位置情報を手がかりに捜索。
SOS発信から15分で、要救助者のいる海域に到着しました。
知床羅臼観光船協議会・長谷川正人会長は、「落水者を早く助けるために非常に有意義だということは今やってみてわかった。これがあったら助かっただろうなという事例が何件もある」と話します。
「よびもり」を開発したのは、オホーツクの紋別出身の千葉佳祐さんが代表を務める、福岡県のベンチャー企業です。
きっかけは、身近な人の海の事故でした。
「羅臼町でおじいちゃんが昔漁師をやっていて、そこで転覆の事故があって、遺体が上がらなかったという事故がありました」
千葉さんの祖父は48年前、羅臼沖でイカ漁の最中に、漁船が転覆して亡くなりました。
今も、遺体は見つかっていません。
遺族の悲しみを知る千葉さんは、海で亡くなる人が1人でも少なくなるようにと、「よびもり」を開発しました。
千葉さんは、「海に出る方全員、漁師さんも観光船の方もそこに乗ってくるお客さんも全員に命綱がついていて、いつでもどこでも最速の救助が受け取れるようなインフラを目指して導入を広げていきたい」と話します。
48年前と同じ、知床の海で起きた観光船の沈没事故を受けて、千葉さんは思いをいっそう強くしました。
「早く『よびもり』を届けることができていたら、もしかしたら遺体をちゃんと家族に返せたかもしれないし、みんなが流された位置情報も可能な限り追えて、捜索を短縮できたかもしれないし、もしかしたら全員が生き残れたかもしれないとも…たらればなんですけど、思ったので、早く届けていかないといけないと思いました」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は放送時(2023年1月23日)の情報に基づきます。
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