2022.09.08

ゆるむ

「ゾウも鼻毛はありますか?」動物園の飼育員が鼻の中をのぞくと?楽しく学ぶ、新たな試み

遠足や休日のお出かけに賑わいを見せる定番スポットと言えば「動物園」。

だけど、「大きい!」「かわいい!」だけじゃない!
動物園をもっと深~く楽しむ方法があるんです!

飼育員と「交換日記」?!

今や各地の動物園でもおなじみとなった、飼育員による動物のガイド。

円山動物園のゾウの場合は、現在週に4~5回行われていますが、飼育員自らが発案し、1年半ほど前から始まった取組みがあります。

お客さんの質問に「交換日記」のように飼育員が答えるコーナーを設置したのです。

専門的な質問から、飼育員でも頭を悩ますような質問まで、多い時には一日20通、毎日届きます。

たとえば、「ゾウも鼻毛はありますか?」という質問。

担当飼育員の野村友美さんは、円山動物園で暮らすゾウの「パール」に協力してもらい、鼻の中を見せてもらったそう。

すると、鼻の穴の入り口付近にはパラパラと毛が生えていたものの、ライトで穴の中を照らしてみると…「ツルツル」だったそう!

交換日記の「飼育員からのこたえ」には、鼻毛がなかったという調査結果だけでなく、ゾウに鼻毛がない理由の考察まで書かれていました。

「そもそも鼻毛の役割は、主に
① ほこりや病原体が体内に侵入するのを防ぐ
② 乾燥を防ぐ
と言われています。
ゾウの場合は、鼻が長いことでこれらの役割を果たしており、鼻毛が必要ないんじゃないかなと思います!」

「お客さんと双方向でやり取りがしたい」、そんな思いで始めた「質問コーナー」。
実は、野村さん自身の幼い頃の体験から生まれたんだそうです。

野村さん

それはある動物園を訪れたときのこと。
子どもたちが感想や好きな動物を書けるようにと「思い出ノート」が置かれていたそうです。

当時小学生の野村さんは、「アルマジロがいつも丸まっているので、顔を見てみたい」と書きました。すると、次に訪れたとき、そのノートには飼育員さんの「お返事」が!アルマジロのかわいい正面の顔が写った写真が貼られていたそうです。

「そのときのことをすごく鮮明に覚えていて、すごくうれしかったんです」と笑顔で振り返ってくれました。

野村さんは、「直接、飼育員に聞くのって会えないのもあるし、聞きづらいのもあり、難しいかなと。動物に対して疑問を持ってくれているとか、もっと知ろうと興味を持ってくれていることがすごくうれしい」と話します。

ゾウの暮らしを、動物園の「中」と「外」で体感!

そして今年からは、動物園を飛び出す新しい試みも始まりました。

7月、札幌市西区小別沢の里山で、地元のNPO法人「Outwoods(アウトウッズ)」が開いたイベントが「森とどうぶつえん」。

里山と動物園の動物たちを通じて、子どもたちに環境について「身近に考えてもらおう」と企画され、円山動物園が賛同、協力して実現した初めての試みです。

Outwoodsの足立成亮さんは、子どもたちに「ここは50年くらい前に、多分人間がはげ山にしてしまいました。木を全部とって、全部街に持って行っちゃって、50年くらい前から復活してきてようやく森に戻ってきた」と説明します。

左端が足立さん

里山で行われているのは「間伐作業」です。

足立さんは、「森っていう空間を、しっかり守っていって健康な状態にするってことが、僕たち人間だけじゃなくて動物たちの環境や健康を守る」と話します。

円山動物園にいるアジアゾウも、故郷のミャンマーではこんな森で暮らしています。

森を守るための間伐材を、動物園のゾウに餌として届けるのが、この日のメインイベントです。


 
ゾウの飼育担当の野村さんによると、野生のゾウが最も食べるのは「枝・草・葉」。体が大きいゾウだと、一日に200キロくらい食べるといいます。

動物園では、ゾウたちは干し草や果物を食べていることが多いですが、実はこれらのエサはゾウにとって「カロリーが高い」食べ物。

本来、一日の大半をエサを探して食べることに費やすゾウにとっては、カロリーの高い食べ物を少しだけ食べるより、枝や草などカロリーの低い食べ物をたくさん食べたほうが、動物園でもストレスなく健康に過ごすことができるんだそうです。

子どもたちは、自分の背丈よりも大きな枝をトラックに次々と積み込み、さっそく動物園へと運びます。

普段お客さんは入れない、ゾウの暮らす場所にみんなで採ってきた枝を設置します。

すると…

あっという間にゾウ舎に森ができました。

ゾウは折った木から、ささくれを作って、とっても上手に木の皮を食べます。森で暮らす野生のゾウと同じ姿です。

ちなみに、4頭いるゾウの中でも特に賢いメスのパールは、木の皮が好きで、てこの原理を使って器用に枝を折る姿を普段からたくさん見せてくれますよ。

ゾウ達が食べたあと、その枝はどうなるのか。子どもたちには「その先」も伝えます。

野村さんが持ってきたバケツ。子どもたちはのぞき込むと、「くせっ」と声を上げます。これは、ゾウのフンです。

ゾウ4頭のフンの量は、1日400キロ。ここに運ばれると、ごみだったフンが150キロほどの堆肥に変身します。

堆肥は土のような見た目。野村さんに促されて触った子どもは、「ふわふわ」と驚いていました。

子どもたちは、「自分たちが立てた木を、ゾウが食べていて身近だなって思った」「堆肥になってから、においがいいにおいに変わって、不思議」と話していました。

最後に、堆肥を再び森の近くの畑に運び、イベントは終了。

ゾウが森の枝を食べ、ゾウのフンからまた植物が育つ。

森とゾウが循環していく、ゾウたちの本来の暮らしや環境を、動物園の中と外の両面から、子どもたちは実感できたようです。

野村さんは、「ふだん動物園で行っているガイドとはちょっと違う。一歩先にいったというか、伝えられるものが違うなって思います」と話していました。

円山動物園の「楽しませる工夫」は、お客さんに向けられたものだけではありません。ゾウたちにも楽しく過ごしてもらうため、飼育員たちは重機の免許を取ったというんです。その理由とは?

円山動物園で暮らす4頭のゾウの活き活きした姿と、飼育員たちの試行錯誤は、こちらの記事でご紹介しています。
「知恵比べなんですよ、毎日毎日」ゾウの暮らしを支える飼育員たちの工夫とは

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2022年8月29日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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