2022.03.18

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「1RTで1匹描きます」→結果、22,000匹もの動物を描き続けることになった20代画家が“ほほえむ” 理由とは

物心ついたときから、画家になるのが夢だったという、25歳の女性。一度は「現実的じゃない」と迷ったといいますが、たとえ不安定な道になったとしても、画家になることを選びました。

そして…今や、SNSで大注目を集める存在に!そのきっかけは、彼女のユニークな発想にあります。その発想の原点には、「お父さんとの思い出」がありました。

過去記事一覧:女性の生き方連載「こう生きたっていい

20代の画家を話題の人へと変えた、1匹のカエル

ぶら下がるカエルに…

逆上がりするパンダ…

しがみつくナマケモノ…!

どの動物も、手帳の「罫線」を使って遊んでいます。

描いたのは、画家の晴夏(はるか)さん・25歳。物心ついたときにはすでに「画家になる」と言っていたため、いつ・どんなきっかけで目指したかは、覚えていないといいます。

映像系の専門学校を卒業した後、3年前、22歳で画家としての仕事を始めました。描いた絵の販売のほか、オーダーメイドの絵の依頼も受け付けています。

最初は依頼がほとんど来ず、「なんとかしなきゃ」と思っていたとき、話題作りのために、罫線にぶら下がるカエルの絵をSNSで投稿しました。

2020年4月の晴夏さんのツイート

「罫線で遊ぶ小動物が1リツイートにつき1匹増える手帳です」と宣言したところ、大反響を呼びます。なんと、22,000リツイート…!22,000匹の動物を描くことになったのです。

晴夏さんも予想外の反響で、驚いたといいますが、「そんなに描けない」なんて思うことはなく、コツコツと描き始めました。今では3000匹ほどに。

10年ほどかかりそうですが、最後まで描ききるといいます。理由を尋ねると、当たり前のように「約束したからです」とほほえんでいました。

「罫線で遊ぶ動物」をきっかけに、仕事の依頼も増えるように。得意とするのは油絵で、キャンバスだけではなく、ギターやネクタイなど、「物」に絵を描く依頼も多いそう。

晴夏さん提供。ネクタイのネコは、ジャケットで隠すこともできる位置

お気に入りのヘルメットに傷がついたので、その傷を覆うように絵を描いてほしい…なんて依頼や、お店の壁やシャッターに大きな絵を描く依頼も受けているといいます。

物に絵を描くのは、ユニークな発想に思えますが、晴夏さんにとっては、子どもの頃からの日常だったそう。発想の原点は、「お父さんとの思い出」にありました。

「お父さんに似て良かった」

晴夏さん提供

石に描かれた、フクロウの絵。晴夏さんのお父さんが描いたものです。

小さな頃から、家族のキャンプには、画材を持って行っていき、お父さんと一緒に、石に絵を描いていたといいます。

晴夏さん提供。お父さんが作った釣りのウキと机

お父さんは物作りが得意で、木を加工したり色を塗ったりして、釣りのウキや机を作るそう。イスは分解した状態で車に積んで運び、現地で組み立てる、実用的なデザインです。

晴夏さん提供。お父さんが作ったイス

晴夏さんは、お父さんとの「物へのお絵かき」が、「日常だったけど、楽しかった。いちばんお父さんの影響を受けていると思います」と振り返ります。

今の仕事でも、お父さんとの思い出の影響で「絵を物にプリントするという選択肢もあるけど、直接絵を描くことで、世界でひとつだけのグッズにすることに意味があると思って、大切にしています」と話します。

晴夏さん提供。缶を開けると、海辺の景色が広がる

終始ゆっくりと、言葉を選びながらインタビューに答えてくれた晴夏さん。目線を上げてはっきり話してくれるのは、家族についての質問でした。

「画家になってよかった。お父さんに似て、よかったなと思います」と言い切っていました。

高校時代や、視野を広げようと映像系の専門学校に通っていた頃には、画家という職業は「現実的じゃない」と迷うこともあったそう。不安定かもしれない道を進めたのは、変わらない「絵が好き」という想いと、家族の存在でした。

「画家になれて、ずっと環境に恵まれてたなと思います。家族や旦那に、止められたりしないで、好きなことを続けさせてもらえたので今がある。いつもがんばれって言ってくれます」

今は結婚相手と暮らしている晴夏さんですが、実家にも頻繁に帰るほど、家族みんなが「大好き」だそう。

今後の目標を尋ねると、「今は自分が生活するだけで精一杯の収入だけど、いつか家族を支えられるくらいになりたいです。…家族が、大事なので」と話していました。

子どもたちに、習うのではなく、楽しむ絵を

晴夏さんは去年から、千歳で、コーヒーを飲みながら絵を眺められるお店を開いています。動物や風景など、晴夏さんが描いた油絵がずらり。

大人用のイスとテーブルの横には、子ども用のイスとテーブルが。

色鉛筆やクレヨンが用意されています。布に絵を描ける、珍しい画材も。

晴夏さんは、「子どもが家ではできないようなお絵かきを思い切り楽しめる場所を作りたかったんです。私が子どものころ通っていた絵画教室の環境が、絵の描き方を習うより、楽しむような場所だったので、そんな場所にできればと思って」と話します。

晴夏さん提供

家だと、思い切り絵を描くと、家具や床に絵の具がつかないか、心配になる人も多いのではないでしょうか。晴夏さんは、お店の床にマットを敷いて、子どもが気にせず絵を描けるようにしています。

水で落ちる画材なので、窓へのお絵かきもOKです。

窓に子どもが描いた絵

この場所が、子どもの「絵を楽しんだ」思い出を生み出し、また晴夏さんのような画家が生まれるのかもしれませんね。

お店でできる、おすすめの思い出づくりがもう一つ。「絵のテイクアウト」です。

手帳を持ち込むと、自分だけの「罫線で遊ぶ動物」を、その場で描いてくれます。(1匹3000円〜、所要時間15〜20分ほど)

せっかくなので、北海道らしい「ヒグマ」の絵をリクエストしてみました。突然にもかかわらず、たった15分で仕上げてくれた絵が、こちら!

か、かわいい…!罫線を使って、のんびり休んでいます。

描いてくれたそのものを持ち帰れるので、色鉛筆の筆圧も残った、温かみのある「世界でひとつだけ」の絵になります。

かわいく、かつリアルな、晴夏さんの絵。自分のペットの写真を持ち込んで、絵をリクエストする人も多いそうですよ。

画家という、個人の才能に左右される職業。それでも、「家族のおかげ」と言い切る晴夏さんの姿には、「自分らしい生き方」は自分だけの努力ではなく、大切な人と一緒に実現してもいいのだと教えられた気がします。

「現実的じゃない」と言われる夢には、社会の反対がつきものです。それでもあなたの大切な人が、挑戦をしようとしているとき、あなたはどんな言葉をかけるか…。迷ったときは、家族の話をするときの晴夏さんの笑顔を思い出してみてはいかがでしょうか。

晴夏さんについて紹介したSitakkeTVの動画は、こちらの記事で
→ https://sitakke.jp/post/2643/

***
晴夏さんへの絵などのオーダーは、Instagramまたはメール(harenatsu0601@gmail.com)から

「Gallery & Atelier 晴彩」
・入場料500円(ウェルカムドリンクとしてコーヒーかジュース付き)
・千歳市信濃4丁目11-4 2F-D号室
Instagramまたはメール(harenatsu0601@gmail.com)から要予約
***

文:Sitakke編集部IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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