「なんだか、うまくいかないな~。」「私の人生、これでいいのかな。」現代を生きる私たちにとって、そんな漠然とした『モヤモヤ』って、尽きないものですよね。きっと、キラキラと人生を謳歌してみえるあの人だって、人には見せない悩みや葛藤があるはず…。
この連載では、北海道で活躍する女性たちをゲストに迎え、それぞれの「モヤモヤ」とどう向き合ってきたのかを深り、人生を謳歌するヒントを見つけていきます。
今回お話をうかがったのは、北海道・士幌町にある『道の駅ピア21しほろ』の運営会社の社長・掘田悠希さん。就職、結婚、出産とライフステージの変化に合わせて、自分らしく輝くことができる居場所を見つけてきたという堀田さん。彼女の事業は道の駅の運営だけにとどまらず、地元の子どもたちと郷土愛を育む公園づくりにまで広がっています。そんなキラキラ眩しくてエネルギッシュな堀田さんに、どのようなな「モヤモヤ」が存在するのでしょうか?
―堀田さんは、飲食店や売店の運営や、商品開発を行う会社の社長(!)ということですが、ここまでに至る堀田さんの歴史がとっても気になります!
両親が脱サラして中札内に移り住み焼肉店を始めたので、私は5歳の頃にはもうエプロンつけてお肉をテーブルに運んでましたね(笑)。
―物心ついた時から、飲食店のノウハウが自然と身についていた感じですか?
まさに商売の英才教育を受けて育ちました(笑)ので、将来は自分も飲食店の経営をしたい!ゆくゆくは家業を継ぎたい!と思ってましたね。
―最初のキャリアになるのは農協の会社員でしたよね?
そうなんです。もともとは、実家の焼肉店を継ぐつもりだったんですが、学生の頃、地元の農家めぐりをしているうちに、農家さんのために働きたい!という想いが芽生え、農協に入所しました。
―まだ社会人歴が短い時期って、「仕事」に慣れるまで色々大変ですよね。
ですね…。やりがいのある仕事を楽しく取り組ませてもらっていたのですが、当時は「モヤモヤ」することも、もちろんありました。生産者の事情やその想いを叶えるために、農協の通常オペレーション以外の対応も積極的に取り組みたい!と思う気持ちと、事務系の職員として、ミスのないオペレーションをスピーディに進行することを求められている業務のはざまで、何を優先すべきか、自分の中でも迷いがあって。ときどき、飲み会の席で上司に感情的な意見をぶつけてしまうこともありました…(遠い目)。
若かったこともあり、思ったことは感情的に訴えてしまっていたんです…。そのような伝え方なので、想いをなかなか受け取ってもらうことは出来ず、誰も救うことのできなかった結果となってしまったこともありました。
―「若さ」故の素直さですね。(涙)「モヤモヤ」は解決できたんですか?
解決できたとまでは言い切れませんが、「モヤモヤ」をきっかけに多くのことを学ぶことができました。仕事を続ける中で、専務秘書のような業務をさせて頂く機会があったんです。農協の事務周りの環境と、経営陣の間にある課題と向き合う立場にいたことから、それぞれ両方の主張やその背景を知ることができました。その経験を通し、想いの伝え方やコミュニケーションの取り方ひとつで、事業はよくも悪くもなるのだということを学びました。
ただ、当時の私は、現場で異論を唱えることはできても、自分からなにか行動をして変えることまではできませんでした。そうしているうちに、農家の男性の方とのご縁があり、結婚を機に退職する形となりました。当時の経験があったからこそ、いまの自分に活かせている学びがあるなと感じています。会社の経営者となったいま、自身の意見の伝え方や、周りとのコミュニケーションの取り方など、人一倍意識するよう心がけているのは、あのときの「モヤモヤ」があったからこそだと思います。
-前の仕事を退職をしたのち、嫁ぎ先での農家のお仕事はいかがでしたか?
実際に自分で農作業の仕事を経験したことで、これまた様々な”学び”がありました。農作業って、コツコツと丁寧にひとつひとつの作業を重ねていくことがとっても重要なんです。それはすごく大変な仕事で、同時に、とても尊い仕事です。私も農作業を続ける中で、その大変さを身に沁みて感じました。一方で、日々の農作業のルーティン業務の中で中々自分のキャリアは活かすことが難しいな、と感じることが多くなりました。
―また「モヤモヤ期」が訪れたんですね(笑)
今まで自分が歩んできたキャリアである、サービス接客や営業、経理の取り組みなどを、自身の「強み」として、いまの業務の中でも活かせたら、もっと自分も貢献できるのになぁと…。仕事に取り組みながらも、いろいろとアイデアを練っていた中で、ふと目についたのが「西洋野菜」です。
農園で栽培しているものの、「西洋野菜」は一般的な食材ではないので、イマイチ売り上げが伸びていなかったんです。ただ、ひと手間かけて調理するだけで、すごく美味しくなることも知っていたので、大量には栽培できない高級野菜ではありますが、販売方法を工夫すれば、高級料理店からの依頼が来るかも、と考えたんです。
「自分の営業スキルも活かせるチャンスかもしれない!」と思い、夫の協力も得て、西洋野菜のレストラン向け事業販売をはじめました。
―ちょっとドキドキする展開ですけど、ご両親からは反対されなかったんですか?
義母は、今まで義母がやってきたことを私にやってほしかったと、思います。義母の期待に応えたいけど、私にとっては、私らしく生涯続けられる「私にできる農業」を模索したいという気持ち。難しいことをモヤモヤしながら続けることより、得意なことでどうにか家族に貢献したいという気持ちがあったので、義母の気持ちには気づきながらも、挑戦させてもらいました。
ただ、最初の頃はレストラン向けの売上げは伸びていなかったので、このまま失敗したらどうしようと焦る気持ちもありましたが…。だけどやめませんでした。
―どうして、やめずに続けることができたんですか??
札幌や東京の料理店など、気になるところにコンタクトを取って営業に行く中で、「大きな農園のお嫁さんがこんなことをしているのは珍しい!」と面白がってくださる方が多くいらっしゃったんです。すぐに結果にはつながらなかったのですが、シェフからシェフへと紹介されて、じわじわと販路が広がっていき、結果的に売上が1,000万になったんです。
生産から営業、販売まで全て1人でやっていたのでなかなか大変だったんですが、両親もあれ?この嫁、稼ぐぞ?ってなって、何も言われなくなりました!(笑)
―「数字」で成果を示した感じですね。かっこいい!
堀田さんのモヤモヤの付き合い方。それは、モヤモヤの存在を認めて、対話していることに特徴があるようです。「自分が苦手なこと、得意なことはなんだろう?」と、モヤモヤとしっかり向き合い、受け止めて、次の経験に活かす。苦悩しながらも、それを続けてきたからこそ、今こうして多方面で活躍する、キラキラと輝く堀田さんの笑顔があるんじゃないでしょうか。
近日公開予定の<後編>では、道の駅のリニューアルを任され、株式会社の代表取締役任命までのヒストリーについてお話を伺います!
文|千歳市在住・地域事業プロデューサー 田村希
イラスト|にゃほこ
<あなたに届けたい記事>
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