2021.11.03

深める

『子ども、産まないの?』『老後どうするの?』プライベートなことに踏み込んでくる人との付き合い方とは

皆さん、ごきげんよう!満島てる子と申します。普段はバーの店長だったり、LGBTパレードの実行委員として人前でおしゃべりしたり。札幌でちょこまかと何かをしている“ 女装子 ”のゲイで~す。

緊急事態宣言やまん防もようやく解除。店長をやらせてもらっている「7丁目のパウダールーム」も久々に、本格的な営業再開となりました。

久しぶりに店に立つと、いろんな人と出会えて、たくさん元気をもらえるの!そして、この楽しい空間をずっと守っていきたいなって、やっぱり思わされるんです。

でも本当に面白いのよね~。店内の様子を見てると、みんながそれぞれにいろんな話をしていて、あたしやスタッフたちにも様々なことを聞いてきたり、時にこのコラムのような相談事をもちかけてきたり。
まぁ、あたしったらその時の気分で「それダルくない?」とか言って別の話題に切り替えちゃったりするんだけれど。雑よね……。笑

今回はそんな、最近の自分の生活ともリンクするような投稿が来ました。ただ、なんだかちょっと深刻そうなの。

読者さんからの相談内容

「小さなお店を経営しています。ありがたいことにお店でのガールズトークを楽しみにされる主婦のお客様が多く、私自身もお客様とのトークを楽しみにしています。ですが……。『子どもは?どうして産まないの?』『年取ったらどうするの?』と聞かれることに、なんだかもう疲れてしまいました。実は私にはFTM※のパートナーがいて、物理的に不可能です。また彼は関係なく、むしろ私に子どもを持ちたくないという考えがあります。そんなことを楽しい空間で言う訳にもいかず、『子どもさんは?』の質問が来る度にズーンと疲れてしまうんです。グイグイ踏み込んでくる方への伝え方、流し方、てる子さんならどうしますか?」
(※FTM=Female-to-Maleの略語。生まれた時の身体的性が女性で、性自認が男性の方)

まずはこの相談者さんに一言。
本当にお疲れ様……そりゃ、ズーンともなるわよね。

あたしたち(と、相談者さんとそのパートナーさんのことを、きちんと確認せず勝手に引き込んで言ってしまうのが適切なのかは、本当は慎重に考えるべきなんだけれど)、LGBTの当事者が直面しがちな問題というか、自分自身「どうしたらわかってもらえるかしら」と悩み続けていることとリンクしていて、「そうよねそうよね」とうなずきながらこの投稿を読んでおりました。

例えば子ども、例えば老後。当然のように家族を育んで、きっと孫ができ、年をとってからも周りのサポートを受けられる……そんな世の“ロールモデル”が、ゲイの当事者として生きていると、自分に当てはめられないことを痛感する場面がよくあります(実際にはゲイとして子どもを持つ選択肢だって事実としてあって、いろんな可能性に開かれてはいるんですけどね)。

だからなのか、まぁ元々の性分なのか、人生については「社会の理想に振り回されず自分の考えでやるっきゃない」なんて思っているのですが、それでも昔なじみのお客さんや友達と話すとき、「子ども作りたくはないの?」「何歳までこの仕事続けるの?」と超どストレートかつ規範的な質問をもらって、うまく答えられず灰と化すなんてしょっちゅうなんです(相手に悪気が無いのは重々承知してるの。でも大変!)。

いやぁ、前にも書いたけれど(第3回)、結婚とか出産とか家族にまつわる諸々って、やっぱり強烈な“呪縛”になりがちじゃない?「こうあるべき」って強制力があって、しかもそれがたくさんの人の心の中に、本人たちも気づかぬ間に根付いているというか。

だからこそ、その“呪縛”に順応できない・しない人だったり、自分の意志でその外側に出る選択をしている人を見ると、その強制力の内側にいる人たちにとっては不思議でたまらなく見えちゃうんだと思うの。なんなら「こっち側にいた方がいいわよ!」っておせっかいも焼きたくなっちゃうんじゃないかな。
おそらく相談者さんのお客さんたちは、そういう視点に立ちながら「子どもは?」って質問をしているはず。

でもきっと、自分のお店という思い入れのある空間で、普段楽しい話をできる大切なお客さんたちだからこそ、相談者さんにとって「じゃあそういう人とは距離を置きましょう」だなんて安易に判断を下すことは絶対に違うだろうし……。難しい問題よね。

育ててきた店の空気感を壊したくないという気持ちと、メンタルにチクッとくる質問をできたら避けたい気持ち。
どちらも文面からよく伝わってくるし、なんならどちらにも共感できるなと思っていました。

あたしなりのAnswer

さて、「てる子さんならどうしますか?」と聞いていただいているわけなので、あたしなりの答えをまず言ってしまうと、何度となく灰と化すのを繰り返した結果、触れづらい話題についても、向こうから質問される前に先手をとって突っ込んでいくように自分はなりました。
「ねぇ聞いて、突然なんだけど、あたし子どもはさぁ……」と、折を見てこちらからきちんと話す時間をとることで、人生の重要事項についてどう考えている人間なのか、そのスタンスを共有しておくんです。

カミングアウトについても最近はそう。自己紹介の時に「こんにちは!あたし女装の同性愛者です!」って話しちゃうの。他にも、例えばあたしはゲイですが、トランスジェンダーのスタッフ、シスジェンダー(※1) のスタッフ、バイセクシャルやヘテロセクシャル(※2)など、店には様々なセクシャリティのメンバーがいるので、その事実をお客様に対して、出来る限りこちらから先に伝えるようにしています。

(※1= 生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致していて、それに従って生きる人のこと。例えばあたしは男として生まれてきましたが、自分のことは男だと自認しているので、シスジェンダーということになります。)
(※2=異性愛者のこと。)

これをしておくと、来てくれたお客さんも「なるほど、じゃあこういう話をしよう」とか、色々考えてくれるようになる気がしていて、結果的にこちらが傷つく可能性が減るように思うのよ(例えば店について言うと、「みんないつ工事したの?」という乱暴な質問が営業中に出てくることは、スタッフの多様性について伝えた後は比較的少なくなります)。言ったのに理解してくれない人がいたとしても、ああこういう方なのねと諦めがつくしね。

ちょっと内容がシリアスにとらえられがちだろうし、話すのに抵抗感があるかもしれませんが、楽しい時間を作りたいからこその土台作りというか、そこにひと手間かけておくと、相手がグイグイ踏み込んでくること自体を少なくできるかもしれません。

ただ、子どもを作る作らないだったり、個々のセクシャリティだったりといった話題は、本来とってもプライベートなものです。あたしは、そっちの方が楽だからという理由で「先に話す」という方法をとっていますが、投稿者さんも含めたみんながプライベートなことを打ち明けるべきだとは思いません

それに、きっと投稿者さんも案じてるところかもしれないんだけれど、例えばすでに関係性が出来上がっちゃってるお客様はどうするかってなると、言えること・伝えられる内容って千差万別かなと思うの。こちらから何も言わない方がその後がスムーズな人もきっといるだろうし。
なんなら、貴重な時間をいただいてサービスをする仕事だと、その中に“自分事”を入れてその時間をつぶしちゃうってどうなのって、プロ意識からの躊躇も出てくるかもしれない。
こればっかりは人ありきの商売のさだめというかなんというか。いやはや、世知辛いもんよね。

だから、今書いたやり方が一番!とは言えないところがあるから、あくまで参考程度に考えてみてください。
いやぁ、本音としてはさ、このモヤモヤにクリティカルヒットするような、詰まりスッキリ!の答えを出したいのですが……。
でも、根本的な解決ってやっぱり難しい気もする。
お客さんもあたしたちも、どちらも人間。そして人間同士の付き合いって、一筋縄ではいかない複雑なものだしね。

だけど、そんな複雑な関係の中でもがきながら、自分なりに働きやすいスタンスを見つけていくことも、接客業の一種の醍醐味だったりすると思います。

疲れちゃうこと、これからもあるかもしれない。あたしもしょっちゅう昇天してる。
でもお互いに、これからも試行錯誤しつつ、大事なお客様とそれぞれのやり方で向き合いながら、自分のお店を、そして自分自身も守っていきましょう。西創成のカウンターからも応援しています!

ま・と・め

というわけで、今回のお悩みは自分の仕事ともつながる内容だったので、書きながらおのれの働き方を振り返ったりしていたのですが……。ここしばらくぐでんぐでんになりすぎな気も。気を引き締めよっと!笑

大切な人たちと出会い、みんなで一緒に作ってきたお店。これからもずっと続けていきたいな。
ではではみなさん、Sitakkeね~!

文|満島てる子
(オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。)

***
過去記事一覧:てる子のお悩み相談ルーム

★みなさんからのお悩みを大募集中!
応募フォームは こちらから。

ーーーー

<あなたに届けたい記事>
果実感がうれしい!北海道の味がギュッと詰まったウワサの缶がこれ!

老舗味めぐり/兄弟で力を合わせて 懐かしい味を守り続ける〈餅の北屋〉

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

この記事のキーワードはこちら

SNSでシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line

編集部ひと押し

あなたへおすすめ

エリアで記事を探す

FOLLOW US

  • twitter