2025.04.01
暮らすここまで話を聞くと、正直思います。
「北海道は貴重な人材を失ってしまったのではないか…?」
なぜ北海道でのヒグマの研究職を離れ、秋田県職員になったのか、聞いてみました。
「研究がしたいというより、人とクマとの無駄な衝突を防ぎたいという気持ちが強かったんです。研究者が知るだけではなくて、正しい知識を地域に広めないと意味がないと、ひしひしと感じていました」
しかし、住民への普及啓発や、現場で一緒に手足を動かしての対策の機会は、研究機関ではなかなかありませんでした。
そんなとき、秋田県庁での募集を見つけたそう。もともとはツキノワグマが原点で「愛着もひとしお」だったこともあり、応募を決意しました。
今の仕事は「大変だけど楽しい」といいます。
「市町村職員や住民との付き合いの中で、信頼してもらって相談してもらえるようになったり、対策がうまくいったり…小さな積み重ねを、積み重ねていける感じが楽しい」と、笑顔で話してくれました。
ただ、必ずしも北海道にとってマイナスというわけではないようです。
北海道の研究機関の「大好き」な先輩が、「秋田県ですごい体制を作れ」と激励してくれたことを心の支えにしてきたといいます。
今も北海道の研究者や自治体職員とも交流があり、ときどき情報交換をしているそうで、「クマの種類は違いますが、対応の勘所は共通しています。全国に仲間がいるのは心強い」と話してくれました。
近藤さんのような専門職員の存在は、これからのクマ対策のカギになります。
しかし、クマ対策は一人だけの努力では前に進みません。
最前線に立つ、市町村の職員。その判断を支える、都道府県の職員。
ときには都道府県の枠も超えて交流することで、互いのいいところを、地域ごとに合った形で取り入れていく…。
そうして各現場の教訓が、次第に国全体のクマ対策を動かしていくのかもしれません。
この記事では自治体の役割について考えましたが、命と暮らしを守るためには、住民ひとり一人にも知っておくべきことがあります。
秋田県では、クマにまつわる、よくある疑問30選に答えた、Q&Aを公開しています。
最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?
クマに会ったら、荷物を置いて逃げればいい?などなど…。
その詳細は、前編の記事でお伝えしています。
【前編:「最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?」よくある疑問30個に回答!秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。
文:Sitakke編集部IKU
2025年3~4月上映の劇場版「クマと民主主義」で監督担当。2018年にHBCに入社し、報道部に配属されてからクマの取材を継続。2021年夏からSitakke編集部。
※掲載の内容は取材時(2025年2月)の情報に基づきます。
■「殺さないとダメ?」ハンターにぶつけた質問 クマに出会った新人記者が知った現実
■「クマに見られる」体験に、あなたは何を感じるのか。『劇場版 クマと民主主義』に抱いた「震えにも近しい感覚」
■ 【北海道の絶景】マイナス20度…白銀の凍てつく世界がオレンジに変わる瞬間 そして爽やかな青へ/十勝・更別村 霧氷スポット