2024.04.16

暮らす

(第1話)脱皮に苦しむ元産炭地【連載】夕張は倒れたままか?~北海道発・高校存続プロジェクトの現在地と課題

道半ばの“魅力化”事業

去年の初セリで2玉350万円の値がついた夕張メロン(札幌市・去年5月)

夕張メロン」は地域名を冠したブランド商品として全国的な人気を誇り、今年も来月には出荷が始まります。その産地=北海道夕張市(ゆうばりし)には、「財政破綻した街」という枕詞が加わるようになって人口の減少が続き、市内で唯一の高校も廃校の危機に瀕しています。

「夕張は、倒れたままか…」。刺激的な言葉で理念を謳(うた)い、高校の存続を模索する同市のプロジェクト「夕張高校の魅力化事業」は道半ばです。8年目を迎えた春に、プロジェクトの現在地と課題を探ります。

産炭地からの脱皮と試行錯誤

市街地で見られたエゾシカ(夕張市・4月)

4月に入っても周りの山々には硬くなった雪が残り、その街の中心部には野生のエゾシカがエサを求めて闊歩(かっぽ)していました。

夕張市(ゆうばりし)は、北海道の中心部に位置する人口6,363人(2024年3月31日現在)の谷合の街です。四方を山に囲まれて交通が不便な一方、その地形が生む寒暖の差で甘みを増すメロンの栽培が主な産業の一つです。

昭和30年代の炭山祭り(夕張市内)

かつては明治時代の初期から炭鉱の街として栄え、人口は1960年(昭和 35 年)に現在の18倍以上の116,908 人を数える都市でした。しかし国のエネルギー政策が石炭から石油へ転換したことで炭鉱の閉山が相次ぎ、炭鉱会社が築いた街のインフラ=病院、社員住宅、上下水道などは同社と関連企業の倒産や撤退で市が買い取ることになり、自治体としての負債が一気に膨らみました。
そして2007年(平成19年)に財政再建団体となりました。「一山一家」と称して住民が強固な絆を誇った石炭の企業城下町は、“家業”の崩壊で財政破綻したのでした。その後、人口の減少と少子高齢化が急速に進み、現在は全国で2番目に人口が少ない市となっています(全国で人口が最も少ない市は北海道歌志内市=夕張市に近いかつての産炭地)。

夕張は、倒れたままか

(右)市長に再選された直後の鈴木直道氏(夕張市・2015年)

夕張は、倒れたままか
夕張は、言い訳するのか
夕張は、メロンだけか
夕張は、高齢化を嘆くのか
夕張の、夜明けはまだか
闇は、自分たちでぶち壊せ
・・・
RESTART Challenge More

YouTube 夕張市公式チャンネル「夕張市まちづくりコンセプト映像」より)

入学式の日の校舎(夕張市・4月8日)

こんな文言を掲げて「夕張高校魅力化プロジェクト」は財政破綻から10年目の2016年に始まりました。人口の減少が加速度を増し、市内で唯一の高校、道立夕張高校でも定員割れが続いて廃校が取りざたされるようになったためです。時は現在の北海道知事、鈴木直道氏が夕張市長に再選された翌年で、財政再建と地域再生を両立させるための新たな財政再生計画が策定される前の年の事でした。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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