2024.04.11

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何回も何回も会い ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第6話)地味に関わり続けて学ぶ看護学生

兼本海音さん(22歳)

「労福会の活動は、夜回りや炊き出しだけではなくて、その後に会議をして、困窮している人、一人一人への対応を議論します。そこにはいろんな考え方や対応の仕方があって、自分が大人になるために考えなきゃいけないことがたくさんあるように思っているんです」

「夜回りでパンを一つ配るにしても、最初は目も合わせてくれない人もいます。でも、何回も何回も会いに行き続けることで相手が少しずつ心を開いてくれ、会話が生まれ、そこからその人が困っていることの本質が見えてくることもあるんです。私が思い込んでいた問題とは全く別の理由が、その人を今そうさせていることだったりすることがあるんです」

「地味な活動が大切かなって…」

兼本さんは3月に大学を卒業して、おばあちゃんが暮らす千葉県の病院で看護師として働く予定です。チャンスがあれば、途上国での予防医学の普及にも関わってみたいと思っています。

冒頭の写真のように、顔見知りの生活困窮者も何人かできました。しかし春からは北海道を離れるため、生活困窮者への支援活動は休止することになります。その兼本さんのゼミの後輩が、今年1月から兼本さんの誘いで支援活動を始めました。

(*注1)北海道の労働と福祉を考える会(通称・労福会): 1999年に北海道大学の学生と教員が母体となって発足した任意のボランティア団体で、路上生活者ら生活困窮者の把握と調査、支援を目的としています。会員は学生に加えて会社員や主婦、公務員、自営業者、福祉関係者、教育関係者ら一般人も加わって運営されています。毎週土曜日には「夜回り」と称して札幌市内を歩き、路上生活者らと対話しながら実態を把握し、食料や生活必需品等を配布するなどの支援を続けています。また月に1回のペースで「炊き出し」も行っています。運営資金は企業や団体、個人からの寄付と助成金、会員の会費などで賄われ、ボランティスタッフと寄付金を募集しています。(https://www.roufuku.org/)

(*注2)夜回り: 上記参照

◇文・写真 HBC油谷弘洋

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路上生活者はこの十数年で減り、街角でも見かけることが少なくなりました。その一方で、車の中やインターネットカフェを転々としながら暮らす人が増え、生活困窮者の実態が見えにくくなっています。ハウスレスという言葉をご存知でしょうか?ホームレスとハウスレスの違いは何でしょうか?

生活困窮者がそうした暮らしを続ける理由は多様です。経済的な問題だけではなく、家族や職場とのトラブルから居場所をなくして孤立する人、障害や精神疾患があって社会への適応が難しい人、依存症になって治療を要しながらもその伝手を得ることができない人、一旦は生活保護の受給を得てもまた路上に戻る人など様々です。

冬には-10℃を下回る厳しい環境の札幌で、ホームレスの人、ハウスレスの人、彼らを支援する人…。この連載企画では、それぞれの暮らしと活動に向き合って、私たちのすぐそばで起きている貧困と格差の今を考えます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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