2024.01.25
深める作品に関する思いをお聞きするだけに止まらなかった、『老ナルキソス』長編版に関するインタビュー。
最後に東海林監督は、今回の大きなテーマのひとつである「老い」というものについて、次のように語ってくれました。
「『老い』という話で言えば、誰もが平等に時間経過とともに老いていくわけですけれど、やっぱりその中で『自分がどう生きてきたのか』『自分が他人や社会とどう向き合ってきたのか』ということがどんどん蓄積されて、それが年とともに先鋭化されていってるよなぁって思うんです。その蓄積をコントロールできる人も、そうではない人もいて、そのせいで時に煙たがられてしまう方もいたりするわけですが……そんな人も含めて、みんながちゃんと生きられる世の中であってほしいですよね」
監督と主演の田村さんによるトークイベントの様子。多くの人が足を運んでいるのがわかります。
「肉体の『老い』については、若い頃と同じようなことができなくなるっていうのはあるんでしょうけれど、なんかしわが増えたとか太っただ痩せたとか、それで醜いとかどうとかって価値観については『それ、ほんと?』って言いたくなるんですよ。その人がどう生きてきたかっていうことの方が、美しさっていうものには関係しているんじゃないかなって気がしますね。」
おのれに対するものとしての美醜に囚われ続けながらも、レオという他者の「美しさ」に徐々に目を開かれ、そこに惹かれていく、不器用なひとりの老ゲイを描いた作品『老ナルキソス』。
「この映画がひとりでも多くの人に届くといいなぁ」と、ひとりのWEBライターとしてだけでなく、いち男性同性愛者としても、そうあたしはしみじみ感じていたのでした。
今回紹介している東海林毅監督の作品、映画『老ナルキソス』長編版は、現在DVD & バリアフリー版制作のためのクラウドファンディングに挑戦中。
※期限は1月31日(水)まで。
リターンですが、DVDはもちろん、非売品のステッカーや、貴重な台本が手に入るコースなども。出演者からのメッセージムービーも、クラファン特設サイト内にて見ることができます。ちなみに、短編版は各種動画サイトで現在配信中。こちらもぜひ!
クィア映画に代表されるような、LGBTQに関する文化が、今後もより発展していくために。
今回に限らず、素敵な映画や書籍と出会う機会があれば、その都度紹介させていただこうと思っているあたしなのでした。皆さん、またお会いいたしましょう。
***
文:満島てる子
編集:Sitakke編集部 ナベ子
***
満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。