2024.01.11

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好きな人に「セフレになろう」と言われた。どうしたらいい?【2023年ピックアップ②】

しかもさ、みいさんが断ってからの相手の言動も、相当うすら寒いわよね。
「性的にフランクじゃないともう先がないぞ」って、いやそんなこと言うの、普通にセクハラっていうかほぼデートDVなんだけれども?!って思うし(「私のことを思ってのアドバイス」とは正反対の行動だわ)。
なんならそんな精神的暴力に1ヶ月も耐え続けたみいさんのことを考えると、「気持ち本当にしんどかったろうに……」と心配しかないわよ。まじ大丈夫?かなり傷ついてない?

唐突に、しかもちょっと小難しい文章になりますが、あたしは今回この相談に向き合っている最中、ドイツの哲学者イマヌエル•カントが『人倫の形而上学の基礎付け』の中で語ったこんな言葉を思い出さずにはいられませんでした。

「人間は物件ではなく、したがって単に手段としてのみ用いられるものではなく、あらゆる行為において常に目的自体として見られなければならない。」

私たちは、別のものの代償になったり、他人から道具として扱われるような「モノ•コト」ではありません。私たちは、人間です。だから、誰かの単なる駒かのように扱われる道理はないし、みいさんもその男性の性欲を満たす「手段」としてだけ扱われる筋合いはないんです。
どんなときも、何をするときも、常に相手の人となりや、その意志を尊重すること。人格を有する存在であることを認識し、その人の尊厳を損なわないよう振る舞うこと。「人対人」の関係性においては、それが前提として当然あるべきだし、その前提の無い状況は健全とは言えないのです。

だからね。
「セックスにフランクな気持ちを持っていないと彼氏はできないんですか?」……この送ってくれた質問にリプするとするならば、「そんなことはないし、それはむしろ今関わっている人に手段としていいように扱われて、その扱いに毒されているから、その人と早く距離を置いたほうがいい」というのが、あたしの答え。
「自分に自信を持って、大事にしたい男性と会う」ためにも、自分のことを大事にしてくれて、生き方や意志を尊重してくれているとはどの角度から考えても言えない人からは、辛いかもしれないけれどしっかり決別して、新しい素敵な出会いを探すことをオススメします。

でも、両想いになれた人と離れるって難しいことだし、実際行動に移すとなると、相当メンタル持ってかれるのよねぇ。
だからみいさんは、その人からサヨナラするためにもそうだし、次のロマンスを探すためにも、まずはおのれ自身をきちんと癒してあげてはどうかしら。
気晴らしにどこかに行くもよし、好きなものを食べてホッコリするもよし。そうやって、誰かに依らずともできるセルフケアを行うことで、自分のなかにちからをためていってほしいんです。

このケアの積み重ね、他人に依らない自信を育てることにも、一役買っていると思うのよね。
「誰にどう見られようと、もしくは見られていなくても、自分は自分」って感覚を手にできるというか。愛されようといなかろうと、ここに存在していていいんだって考えられるようになるというか。
そんな軸ができてくれば、もう大丈夫。
どこからいつやってくるかはわからないけれど、「この人だ」って出会いがみいさんのところに来た時に、臆さずに、かつ過度な入れ込みもせずに、しっかりとそのご縁を掴むことができると思うの。

今回のお相手さんは、その軸形成を促してくれたいい反面教師。
きちんとひとつのステップとして消化し、「悪いけど踏み台にさせてもらうわねん♪」ぐらいの感覚で、過去に置き去りにしちゃってはどうかしら。
あっかんべ〜!しちゃうぐらいのノリで全然いいと思うから。

みいさんもあたしも、まだまだロマンスを求める旅の途中。
お互いいい出会いができる日まで、これからもぬるぬるゆるゆる生き抜いちゃいましょ!
(素敵な人と出会ったらぜひ教えてねん。あたしもそんな報告、いつかできたらいいなぁ)

ま・と・め♡

てなわけで、今回は性と恋、そして自尊心と、様々な要素が複雑に結びついたお悩みと向き合わせていただきました。
「誰かと惹かれ合うこと」って、ときに人生まるごと関わるような一大事だから、総合芸術的な面白みもあれば、難しさもあったりするのよね〜。やぁ大変だわぁ。

読者の皆さんの中にも、もしかしたら新しいときめきに身を焦がす方も出てくるかもしれないわよね。その時には、どうか「手段としない、手段とされない」ってことを忘れずにいていただければと思います。
人の間の信頼も信用も、愛だって、尊重しあってこそようやく成立するものなのよね。

時に木枯らしが吹くことは人間関係の宿命みたいなもんだけれど、相手を大切に思い、大事な存在として接しようとする気持ちは、忘れずにいたいものです(自戒を込めて)。

どうかひとりでも多くの人に、素晴らしい邂逅がありますように。
ではでは皆さん、Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:ナベ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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