2024.01.19
暮らすまず、クマの描写がリアルです。
日本では北海道だけで生きる「ヒグマ」。
その怖さを描きつつも、ただ怖さをあおるわけではないという意味で、「リアル」だと思いました。
クマの表情や毛並み、爪や歯もリアル。クマの奥歯と、オオカミの奥歯の描き方まで区別されているように見えます。
歯は、その動物がどんなものを食べているのかを表すので、大切なパーツです。
クマの怖さをあおりたいのであれば、とにかく肉食っぽい、ギザギザの歯になるでしょうが、実際のクマの奥歯は人間とそっくりで、平たくなっています。
平たい歯は「すりつぶす」のにぴったりで、クマが雑食で、ほとんどは草や木の実を食べていることを表しています。
人と出会ったときのクマの行動もリアル。
クマに出会うシーンといえば、多くのフィクションでは、クマが勢いよく走って向かってきて、両腕を振り上げて立ち上がって、突然襲ってくる…という描写を目にするかと思います。そういうものだというイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし、11月に開催した「ヒグマフェス2023」の中で、アウトドアが好きだという「HAMBURGER BOYS」が、専門家に「クマに出会ったらどうするか」を質問したシーン。
“クマ役”が走ってきて、両腕を振り上げてガッと襲いかかるのですが、そこで専門家が「そういうケースは少ない」と指摘しました。
『ゴールデンカムイ』で人と出会ったときのクマの体勢・近づき方は、「典型的なイメージ」とは違いました。
さらにそこから人を攻撃する場合には、前編の記事でご紹介したように、 「人のNG行動」が引き金になっています。
クマに攻撃されるには、いくつかの理由があります。ただやみくもに襲ってくるのではなく、その理由まで描写しているという意味で、「ちゃんと怖くない」。
一方で、ひとたび襲われてしまえば、命にもかかわる事態になります。
『ゴールデンカムイ』では、クマに内臓を食べられたり、殴られた反動で顔の皮がむけたりするシーンがあります。
フィクションの誇張と思われるかもしれませんが、実際の取材でも、被害者を見たハンターや親族などから、そうした状況があったと聞いたことが、複数あります。
クマの行動に「理由がある」と知ることも大切ですが、「これをすれば100%大丈夫」という対策はありません。
「怖さ」も正しく知って、正しくおそれて、地道に対策をすることが大切なのではないかと思っています。