物語に深みを持たせているキーワードが「転生」だ。兄・アクアの前世は医者。妹・ルビーの前世は、重い病を患う少女。アイの熱狂的ファンという共通項を持つ2人は共に無念の死を遂げ、アイが産んだ双子の兄妹に生まれ変わる。
アクアは前世の悲惨な記憶を引きずったまま成長。恋人と過ごす幸せなひと時さえ素直に受け止めることができない。アイドルを夢見て純粋だったルビーは、最愛の人たちの最期にショックを受け、復讐心から“闇落ち”していく。
ルビーの表情のない表情が思いのほか怖い。華やかなアイドルという仮面の下に、心が歪んだ陰キャラという素顔を隠し持っている。複雑に絡み合う人物設定が、単なるアイドル業界モノにとどまらない“推しの子ワールド”を生み出している、と専門家ぶって分析してみる。
長女いわく、イチ推しのキャラクターは「もちろん星野アイ」。理由は「キラキラしたトップアイドルだから」。「いやいや、隠し子いるんですけど」と突っ込みたくなるが、そこは気にならないらしい。昭和世代と令和世代の違いを痛感する。
ちなみに自分が気になったキャラクターは、星野ルビーと共にアイドルグループ「新生B小町」のメンバーであるMEMちょ(めむちょ)。
MEMちょ(めむちょ)は、18歳のYouTuber兼インフルエンサーと称して登場したが、7歳もサバを読んでいて、実年齢は25歳。年齢詐称という芸能界あるあるですね。天真爛漫キャラだが、働きづめで家計を支え、遅ればせながらアイドルになる夢をかなえた苦労人だ。
その分析力の高さを生かし、「新生B小町」の認知度アップ作戦を立てる“バズりのプロ”。悪目立ちすることなく、いつも一歩引いた立場をとり、アイドルとしての自身の限界さえクールに受け止めている。
一方で、周囲の恋愛事情に気をつかう優しさがあり、ゆるい空気感を失わない。主人公たち、そして読者をも癒してくれる存在だ。「呪術廻戦」のパンダに通じるものがあり、おじさん世代はつい応援したくなる。
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