「ア・ナ・タのアイドル~、サインはB!」
近頃は「坂道系」なるものが全盛らしいが、いずこのアイドルグループか。そこそこベタな歌詞が長女の部屋から聞こえてくる。
YouTubeかTikTokの動画音楽に合わせて、長女(小6)が歌っているに違いない。微妙にキーが外れているのはご愛嬌ということで、ドアの開いた部屋をのぞくと、漫画片手に随分ご機嫌の様子。
「何を歌ってるの?」と尋ねると「まさか『推しの子』を知らない??」。
単行本を見せつけながら案の定のリアクション。この前、買った漫画はこれか。次から次に流行りモノをぶつけられても、50代のお父さんはついていけません…それが数か月前のことだった。
アイドルグループ「B小町(びーこまち)」のセンターを務める星野アイ(16歳)の隠し子として生まれた主人公・アクア。双子の妹・ルビーと共に、トップアイドルだった母親のアイを殺した男への復讐を誓う。芸能界関係者と思しき、その男を捜し出そうと、兄妹で業界入り。スタータレントへの道を駆け上がりながら事件の真相に迫る物語だ。2020年に“ヤンジャン”で連載スタート、瞬く間に話題となり、アニメ化もされ、社会現象化した人気漫画である。
興味本位で読んでみると、「推しの子」は、昨年、長女がハマっていた 「呪術廻戦」とはまた一味違うダークな世界観に包まれていた。「清く正しく美しく」がモットーのアイドルという虚像がいかにして作り上げられていくか。動画配信、SNS、インフルエンサーなど、今どきのトピックスを深掘り。徹底したリアルさで、ドラマにバラエティ、映画や2.5次元舞台など、芸能界の舞台裏を描く。
「『私は特別に可愛い』という嘘を信じさせてくれる説得力。僕はそれをスター性と呼んでいる」(by鏑木プロデューサー ※「推しの子」第7巻より引用)
相当な取材量と洞察力を感じさせるが、かなり生々しい。リアリティ番組の出演者がSNSで誹謗中傷されるエピソードは、現実世界の出来事とリンクして洒落にならないレベル。芸能事務所と制作サイドのビジネスライクな関係の描き方も、ジャニーズの一連の問題を思い起こさせる。
漫画やアニメはOKだが、実写化のハードルは高そうなどと、余計なお世話なことを考える。長女は「裏側が分かって面白い。クラスのみんなにも人気だよ」とのたまうが、あまりにも夢がない。
お父さんとしては、来春、中学生になる我が子の成長にどう影響するか内心ヒヤヒヤものだし、斜にも構えたくなる。
▼ゆゆパパ&ゆゆの漫画レビュー記事
「呪術廻戦のどこが面白い?」小学5年生の長女に、父親が聞いてみると…”意外”な答えが返ってきた