「妥協しない麺づくり」で、70年以上も地域に愛されながら廃業の危機に陥った製麺所が、北海道東川町にあります。
「マチの財産」を守ろうと事業を引き継いだのは、地元の料理店。
託す側と受け継ぐ側の思いです。
連載「じぶんごとニュース」
東川町で開かれた「生うどん」の新商品の試食会。
北海道産小麦と大雪山の湧き水で作られたコシが自慢です。
細めの麺でもちもちしていて、スルッとのどに入っていきます。
東川町で70年以上続く「羽衣製麺」。
2代目の久保尚義さんが、先代の父親から受け継いだ製麺機で57年間、うどんや蕎麦、ラーメンの麺を製造。
最盛期には町内外の30以上の飲食店に販売するなど、地域に愛されてきました。
大晦日はそばだけで1万食以上を作ったことも…。
しかし、久保さんは現在82歳。
自身の体調や後継者の不在から、2年前には廃業を考えていました。
そんなとき、「跡を継ぎたい」と声を上げたのが、同じ町内の老舗料理店「笹一」でした。
「地域の財産」である羽衣製麺の麺を守りたいと、今年1月、札幌市のコンサルティング会社と組んで事業を承継。
新しく入れ替えた機械で、新商品の発表に至りました。
41歳の寺林幸一社長は、とにかく「羽衣製麺」の大ファン。
「このまま辞められたら困ると思ったときに、じゃあやるか!と」と笑います。
麺づくりを受け継ぐために、「笹一」のそば職人・藤田忠志さんは、1年半かけて道産小麦の配合比や水の分量などを久保さんから学びました。
湿度も気温も…。奥が深い老舗の味。
藤田さんは「今までどおり、久保さんが作った麺を、そのまま変化なくずっと続けたい」と話します。
そんな姿をみて、店を託す久保さんは、「跡を継いでくれるのは最高の幸せ。この人ならもっとおいしい麺を作ってくれると思っています」と力強く話していました。
羽衣製麵は、多くの人にこだわりの味を堪能してほしいと、12月から東川町の道の駅やインターネットでの販売を始めています。
親子代々培ってきたうどんの品質はそのままに、新たに再出発した羽衣製麺。
東川で愛され続けた暖簾を地元の仲間が守り続けます。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年11月29日)の情報に基づきます。
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