2023.12.05
深める通学には地下鉄と路面電車を乗り継いで、片道約50分かかります。当初は学校に近い所でアパートを探しましたが、家賃が高く、豊平区内のアパートに部屋を借りることにしました。
通学の一番の苦労は、アパートから地下鉄に乗るまでの区間です。まずは住宅街を車椅子で進みますが、大きな通りに出ると、「車道を走らなきゃならないんです(本人談)」。
(私)「どうしてですか?」
(吉野さん)「ほら、この歩道の傾き、わかりますか?」
(私)「あ~っ、右に傾いていますね」
(吉野さん)「わかりますか?車椅子だと車体が傾いて、倒れちゃうんです。だから、平坦な車道を走らざるを得ないんです」
片側2車線の幹線道路で、吉野さんは必死に車椅子をこいで行きます。その吉野さんを、後ろから来る車が、ビュンビュン追い越してゆきます。
(私)「危ないですね」
(吉野さん)「はい、怖いです…」
道路交通法では、車椅子は歩行者と同じ扱いになり、本来は歩道を通行しなければなりません。しかしこの区間で、車椅子が歩道を通行することは、事実上、難しいようでした。
【連載記事のラインナップ】
●プロローグ 開校2年目の夏~札幌市立星友館(せいゆうかん)中学校
●エピソード(1)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その1「思い出したくもない過去」
●エピソード(2)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その2「奇跡の来日」
●エピソード(3)農作業と入院~少女時代を取り戻す82歳と72歳の青春
●エピソード(4)同級生の前にさらされて…不登校経験者・Y(19歳)
●エピソード(5)「虐待で育ったから…」父子で通う同級生親子
●エピソード(6)3時起床23時就寝…もっと勉強したい56歳
●エピソード(7)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合・その3「再びホームレスと…」
●エピソード(8)「自主」と「公立」~交流で“生きた学校”として変わり続ける”まなびや”
●エピソード(9)それでも通学する・その1~アフガニスタンから来た17歳少年の場合
●エピソード(10)それでも通学する・その⑵~車椅子の60歳男性の場合