2023.12.11
食べるこばめちゃんは、「缶に入った食材は、すでに火が通っているので、火が通っているかの確認がいらなかったり、食中毒のリスクを減らせたりする良さがある」と話します。
2018年9月の胆振東部地震。こばめちゃんは札幌にいて、「ブラックアウト」を経験しました。
「乾パンを食べたときに、『被災者』だと感じたんです。でも、ツナ缶を食べたときには安心感があったんですよね。ふだんから食べているものだから」
災害時以外でも、「缶」はさまざまな楽しみ方があるといいます。
「サバの水煮缶」は、冷や汁以外にも、ふだんの味噌汁に入れたり、ごはんに混ぜておにぎりにしたり、きのこやニンジンと一緒に炊き込みご飯にしたり、そうめんのつゆにいれたり。
子どもでも食べやすい「ツナ缶」は、ニンジンと一緒に炒めたり、コールスローサラダに入れたり、ごはんにも合うのでアレンジの種類が盛りだくさん。
「やきとり缶」なら、ごはんに混ぜてもいいですし、そのままでも一品になります。
だてちゃんは、「乾パンも、ふだん食べたことがあれば安心できるかもしれない。日ごろから食べる経験をするのが大事なのかも」と話しました。
すると3人は、「レアチーズケーキの下のクッキー部分に使ったり、おかしにも使える」「ティラミスもできそう。乾パンを買ったからこそ作るお菓子で、特別感もある」と、次々とアイデアを教えてくれました。
なぜ、こんなにどんどんレシピのアイデアが浮かぶのか?
聞いてみると、大学の授業の中で印象に残った言葉を教えてくれました。
「食べたものじゃないと作れない。食べる種類を増やすことで、料理のボキャブラリーが増える」
3人とも、料理を作る以前に、食べることが好きなんだそう。
いろいろなものを食べるからこそ、おいしいものを作ることができる…
それを知っているからこそ、「へるすたでぃ」で子どもたちに作る料理は、道外の郷土料理など、「子どもにとって、なかなか食べる機会がないもの」に挑戦しているといいます。
取材日に作っていた鮭のホイル焼きは、さっぱりしたレモンの味つけ。
「レモン汁を使うことはあっても、レモンの果実から使う機会は少ないかと思って、果実から使って、果肉も入れた」といいます。
レモンの酸味は、塩分を強く感じさせる効果があり、さらにコンソメを入れて深みを出すことで、塩分を少なめにできることも工夫のポイントとのこと。
秋らしい「梨のゼリー」も、「あまり見かけないから」という理由もあって挑戦。
なかなか固まらなくて苦労したといいますが、試作を重ねて、「切って入れるのではなく、すりおろして入れたら固まる」ことを発見したといいます。
なじみのないメニューだと、子どもは興味を持って食べてくれる。
そしてこの食材を食べたことがあるという経験が、今後の食生活を豊かにし、健康や楽しみにつながるかもしれない。
さらに「食べたことがある」という経験は、子どもにとっても大人にとっても、災害時の食事の安心感につながるかもしれません。
学生ライター・いーがんは、取材を通して、「体の栄養が摂れる食事も、心の栄養となっていなければ食が進まないのではないかと感じた」といいます。
食べ慣れたものを備え、「ローリングストック」(=日常生活で備蓄を使い、常に新しいものに入れ替える)をすることが大切だと学んだと話していました。
もし災害が起きたら、何をどうやって食べようか?
まずは缶を、ふだんの食事に取り入れるところからスタートして、
「もし電気も使えなくなったらどうしよう」
「カセットボンベを備えておこうか」
「これなら火がなくても」…などなど、おいしく楽しみながら、考えてみませんか?
いーがんは、この取材をきっかけに、缶を使った料理を3つ作ってみました。
次回の記事でご紹介します。
※「へるすたでぃ」での学習支援と食事提供については、学生ライター・わっかが書いた記事でくわしくお伝えしています。
特集「秋冬のじぶんごと防災」
取材:学生ライター・いーがん、わっか、Sitakke編集部IKU
文:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は取材時(2023年9月)の情報に基づきます。