缶のススメ…ブラックアウトで知った大切なこと

冷や汁のレシピを見せてくれたこばめちゃん

こばめちゃんは、「缶に入った食材は、すでに火が通っているので、火が通っているかの確認がいらなかったり、食中毒のリスクを減らせたりする良さがある」と話します。

2018年9月の胆振東部地震。こばめちゃんは札幌にいて、「ブラックアウト」を経験しました。
「乾パンを食べたときに、『被災者』だと感じたんです。でも、ツナ缶を食べたときには安心感があったんですよね。ふだんから食べているものだから

災害時以外でも、「缶」はさまざまな楽しみ方があるといいます。

「サバの水煮缶」は、冷や汁以外にも、ふだんの味噌汁に入れたり、ごはんに混ぜておにぎりにしたり、きのこやニンジンと一緒に炊き込みご飯にしたり、そうめんのつゆにいれたり。

子どもでも食べやすい「ツナ缶」は、ニンジンと一緒に炒めたり、コールスローサラダに入れたり、ごはんにも合うのでアレンジの種類が盛りだくさん。

「やきとり缶」なら、ごはんに混ぜてもいいですし、そのままでも一品になります。

だてちゃんは、「乾パンも、ふだん食べたことがあれば安心できるかもしれない。日ごろから食べる経験をするのが大事なのかも」と話しました。
すると3人は、「レアチーズケーキの下のクッキー部分に使ったり、おかしにも使える」「ティラミスもできそう。乾パンを買ったからこそ作るお菓子で、特別感もある」と、次々とアイデアを教えてくれました。

料理のアイデアを話し合う3人は、とても楽しそう(左からだてちゃん、こばめちゃん、りっちゃん)

なぜ、こんなにどんどんレシピのアイデアが浮かぶのか?
聞いてみると、大学の授業の中で印象に残った言葉を教えてくれました。
食べたものじゃないと作れない。食べる種類を増やすことで、料理のボキャブラリーが増える

3人とも、料理を作る以前に、食べることが好きなんだそう。
いろいろなものを食べるからこそ、おいしいものを作ることができる…

それを知っているからこそ、「へるすたでぃ」で子どもたちに作る料理は、道外の郷土料理など、「子どもにとって、なかなか食べる機会がないもの」に挑戦しているといいます。

取材日に作っていた鮭のホイル焼きは、さっぱりしたレモンの味つけ。
「レモン汁を使うことはあっても、レモンの果実から使う機会は少ないかと思って、果実から使って、果肉も入れた」といいます。
レモンの酸味は、塩分を強く感じさせる効果があり、さらにコンソメを入れて深みを出すことで、塩分を少なめにできることも工夫のポイントとのこと。

秋らしい「梨のゼリー」も、「あまり見かけないから」という理由もあって挑戦。
なかなか固まらなくて苦労したといいますが、試作を重ねて、「切って入れるのではなく、すりおろして入れたら固まる」ことを発見したといいます。

なじみのないメニューだと、子どもは興味を持って食べてくれる。
そしてこの食材を食べたことがあるという経験が、今後の食生活を豊かにし、健康や楽しみにつながるかもしれない。

さらに「食べたことがある」という経験は、子どもにとっても大人にとっても、災害時の食事の安心感につながるかもしれません。

左側が学生ライター・いーがん(手前)とわっか(奥)、右側が手前からりっちゃん、こばめちゃん、だてちゃん

学生ライター・いーがんは、取材を通して、「体の栄養が摂れる食事も、心の栄養となっていなければ食が進まないのではないかと感じた」といいます。
食べ慣れたものを備え、「ローリングストック」(=日常生活で備蓄を使い、常に新しいものに入れ替える)をすることが大切だと学んだと話していました。

もし災害が起きたら、何をどうやって食べようか?

まずは缶を、ふだんの食事に取り入れるところからスタートして、
「もし電気も使えなくなったらどうしよう」
「カセットボンベを備えておこうか」
「これなら火がなくても」…などなど、おいしく楽しみながら、考えてみませんか?

いーがんは、この取材をきっかけに、缶を使った料理を3つ作ってみました。
次回の記事でご紹介します。

※「へるすたでぃ」での学習支援と食事提供については、学生ライター・わっかが書いた記事でくわしくお伝えしています。

特集「秋冬のじぶんごと防災

取材:学生ライター・いーがん、わっか、Sitakke編集部IKU
文:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2023年9月)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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