2023.10.31
深めるかおりさんが自然に興味を持ったきっかけは、小学生の頃。ガールスカウトに参加して楽しかった思い出が原点になり、高校でワンダーフォーゲル部に所属しました。本格的な部活で、「地図とコンパスだけで山を歩く術」「一日の工程に必要なカロリーを計算して食事を考える術」など、自然の中で生きる方法を学びました。技術だけでなく、「自然の恩恵を受ける」ということを、体感したといいます。
「当時道具も進化してなくて、夜、テントの中で眠るときに、新聞紙を背中に入れて暖を取ることもありました。夜の冷え込みを痛感するからこそ、日が昇ったときの太陽の恵みに感謝できるんですよね」
実は当時、修学旅行で初めて北海道に来ていたものの、自然には触れなかったのか、それほど印象に残っていないそう。「お寿司屋さんに背伸びして入って、高校生なりに値段を計算しながら食べたんですけど、メニューに書いてあるのは一貫分の値段で、実際に出てくるのは二貫ずつ。お会計が予想の倍になっちゃって」と、笑いながら振り返ります。北海道に住みたい…なんて、考えてもいませんでした。
高校卒業後は、家族の引っ越しに合わせて神戸の大学に進学。「ずっと働けるようになりたくて、理学部物理学科を選びました。女性でも技術があれば一生働けるかなと思って」と話します。
就職は関東の精密機器メーカーの開発部門。夫の彰浩さんもこの会社に勤めていました。
カメラの部品づくりにも関わることになり、ユーザーの視点を知るべきだと思い、撮影を始めました。子どもの頃から写真を学んでいた彰浩さんに教えてもらうようになり、全国いろいろなところに連れて行ってもらったといいます。
その中で、北海道の自然にも触れました。釧路湿原や、知床のサケマスの遡上、流氷…自然現象に心を動かされ、「同じ国の中でも南と北で生きている動物が違う、季節も変わるということに興味を持ったんです。いまの自然環境をできる限り記録として残して、子どもたち・次の世代に伝えていきたいと思いました」と話します。
沖縄や奄美大島など、全国各地をまわる中で、知床には年に3回は通い、地元の人と話す機会も増え、縁がつながっていきました。