2023.10.01

暮らす

犬と一緒に避難できる?災害があっても、愛犬との暮らしを守るには【札幌で防災体験】

愛犬は家族の一員。だからこそ、災害時のことも考えてみませんか?

2011年3月の東日本大震災。環境省によると、少なくとも3000頭以上の犬が命を落としました。命は助かったものの、けがをしたり、家族と離ればなれになったりした犬もいるといいます。

9月16日、災害時の備えを考えるイベントが、札幌で行われました。

連載「じぶんごとニュース

がれきの道を、愛犬とどうやって歩くか

トイプードルのムアくん。
黄瀬知美さんに導かれるまま、すっぽりと「抱っこ紐」の中におさまりました。

黄瀬さんと、愛犬のムアくん

「ドッグスリング」と呼ばれる、犬用の抱っこ紐。
黄瀬さんが代表をつとめる「erva(エルバ)」で開発・販売しているものです。

黄瀬さんは、9月16日、札幌・南区で「愛犬を災害から守るための防災イベント」を開催しました。
参加したのは、チワワやシーズー、トイプードルと暮らす4人。

黄瀬さんが参加者に語りかける間も、ムアくんは終始「ドッグスリング」の中でリラックスしていた

災害時、がれきなどで歩きづらくなった道を、愛犬と避難できるか。
木などを障害物に見立てて、悪路を避難する体験をしました。

トイプードルの幸太くん

愛犬はドッグスリングに。背中には、2リットルのペットボトルを2本入れたリュックを背負います。

「ドッグスリング」は1キロ未満から20キロまでの犬に対応していて、胸に抱くように、体にピッタリと密着します。

障害物を乗り越えるときも、暴れることなくしっかりと抱かれていた、トイプードルの幸太くん。

ドッグスリングは、手で抱っこするのと比べて、両手が空くのが特徴です。
ときどき木を手でつかみながら避難する参加者もいました。

シーズーの豆千代ちゃん

シーズーの豆千代ちゃんは、かがんだ姿勢になると、驚いたのか少し動いたといいます。

黄瀬さんは、「悪路で愛犬がどう反応するかを知っておいて、いかに安全に避難できるかを考えておくのが大事」と話していました。

豆千代ちゃん

トイプードルの福くんと明ちゃんは、小柄なのでひとつのドッグスリングに一緒に入ることができます。
ふだんから散歩のときに使っているといい、慣れているからか、福くんと明ちゃんは避難訓練でも嫌がる様子を見せず、落ち着いていました。

左が明ちゃん、右が福くん

災害時に必要なものは?

黄瀬さんは現在、家を持たず、ムアくんと一緒にキャンピングカーで全国を旅しています。
本当に必要なものしか持たない生活が、「防災につながる」と感じたといいます。

自分が用意している「愛犬の防災グッズ」として、最低3日分の食料や、ブラシ、歯みがきセット、お気に入りのベッド、飼い主のにおいがついたタオル、爪切りなどを紹介。爪切りは、ふだんはトリマーなどに頼っている人も、自分でもできるようにしておくといいと話しました。

お気に入りのベッドでくつろぐ、黄瀬さんの愛犬・ムアくん

また、避難先で体調不良になったときのために、かかりつけ医以外にも正しく状態を伝えられるよう、健康診断などの履歴を、印刷してファイルにまとめておくほか、携帯電話でも見られるようにバックアップしておいたほうがいいといいます。

黄瀬さんとムアくんが、キャンピングカー生活の中で実践している「人も犬も食べられるごはん」も紹介。

肉と、保存がきく「乾燥野菜」を、ひとつの鍋で、カセットコンロで煮込むだけでできます。
愛犬にはそのまま、人は皿に盛ってから、塩やしょうゆなど好みの味をつけます。

黄瀬さんは「手間をかけない、“映えない”料理だからこそ、続けられる」と話し、参加者も「見た目のわりにおいしい!」と、人も犬もおかわりするほど好評でした。

黄瀬さんは、「お話しするのはあくまでヒント。合う合わないがあると思うので、こんな考え方があると知って、何かひとつでも持って帰ってほしい」と話していました。

今回、黄瀬さんが紹介した「防災グッズ」や「防災料理」は、黄瀬さんとムアくんが、災害時に限らず、日ごろから使っているもの。
「ドッグスリング」も、災害時だけでなく、マンションの共有エリアなど犬が歩けない場所で使ったり、掃除機や雷をこわがって抱っこが必要なときや、体調が悪く歩けないときに使ったりできるそう。

日ごろから使っているものが防災につながる。自分にとって絶対に起こってほしくないことを考えると、必要なものがわかってくる」と話す黄瀬さん。

参加者は、愛犬と「災害時も離れる気はない」「家族の一員」と、その大切さを再認識していました。
イベント前には「水くらいしか用意していない」「正直あまり防災について考えてなかった」と言っていた人も、最後には「帰ったらさっそく健康診断の履歴をコピーする」「乾燥野菜は思いつかなかったので、やってみたい」「両手が空く大切さがわかった」と、防災について具体的にイメージするようになっていました。

『自分にとって絶対に起こってほしくないこと』が、「愛犬を失うこと」なら、災害があっても命を守るための備えを、具体的に考えてみませんか?

文:Sitakke編集部IKU

胆振東部地震から5年。道内各地の今や、これからの防災に関する情報は、Sitakkeの特集「秋冬のじぶんごと防災」でお伝えしています。

※掲載の内容は取材時(2023年9月16日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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