2023.09.29

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モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合・その3「再びホームレスと…」【連載】星のまなびや~札幌発・夜間中学校に集う人々(7)

「おかん」のおにぎり

“炊き出し”で受付を担当する大塚清龍さん(20歳)=左

大塚さんは、来日のきっかけを作ってくれた一般社団法人「札幌市一時生活支援協議会」理事の小川遼さん(31歳)から労福会のことを聞き、ボランティアに参加し始めました。この日の役割は受付で、同じボランティアの女性から参加者の情報を教えてもらいながら運営の一翼を担いました。

「僕も去年の今ごろはホームレスでしたから…」。
「日本の場合は幸せです。モロッコの路上はカオス(混沌)でした。もちろん、事情が違いますから比較はできません」。

「札幌に来てホームレス同士のけんかも見ましたが、僕にはそんな人らの気持ちがわかるんです。だって食べるものがなかったり孤独だったりすると、心の余裕なんてなくなっちゃうでしょ?」。
「人にはいろんな事情があるんですよ」。

配られた「おにぎり」

そう話す大塚さんは、会場に来る前の準備で、おにぎりづくりを手伝いました。モロッコにいた時、「おかん」がぬるま湯に塩を溶かし、そのお湯を手に湿らせて握っていました。その様子を見よう見まねで覚えていたのです。

大塚さんが握ったおにぎりは数十個にもなりましたが、かつての自分と同じような境遇の人たちを満たす食料として、あっという間になくなりました。

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「北海道の労働と福祉を考える会」代表 山内太郎さん(48歳)

任意団体「北海道の労働と福祉を考える会」 代表 山内太郎さん(48歳)

「ホームレスの人は20年ぐらい前とは大きく変わっています。かつては『死んでしまいたい』と口にする人も多くいましたが、今は『家族に迷惑がかかるから、生活保護はできれば受けたくない』という方もいます。一見、暮らしに困っていないように見える方もいます。しかし実態は、家族と離れたり、自活できなかったりして、困窮している人たちがたくさんいます。最近は非正規雇用の問題を象徴するように女性の困窮者が増えています。問題の本質が見えにくくなっている…そこが貧困問題の奥深いところなんです。私たちの活動には正解も終わりもなくて、悩みながら考えながら続けています」。

*注1)任意団体「北海道の労働と福祉を考える会(=労福会)」:1999年に北海道大学の学生と教員が母体となって発足した任意のボランティア団体で、路上生活者らホームレスの人たちの把握と調査、支援を目的としています。会員は学生に加えて会社員や主婦、公務員、自営業者、福祉関係者、教育関係者ら一般人も加わって運営されています。毎週土曜日には“夜回り”と称して札幌市内を歩き、路上生活者らと対話しながら実態を把握し、食料や生活必需品等を配布するなどの支援を続けています。また月に1回のペースで“炊き出し”も行っています。運営資金は企業や団体、個人からの寄付と助成金、会員の会費などで賄われ、ボランティスタッフと寄付金を募集しています。

*注2)札幌市立星友館中学校は、入学を随時受け付けています。9月から12月までの間に受け付けの場合は来年4月入学となり、来年1月から8月までの間に受け付けの場合は来年5月から10月までの間の入学となります。詳細は同校へお問い合わせください。

◇文:HBC・油谷弘洋

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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