2023.09.28

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「虐待で育ったから…」父子で通う同級生親子【連載】星のまなびや~札幌発・夜間中学校に集う人々(5)

無理を強いられない環境

父・寿浩さん(43歳)

「愛情は全力で注いでいます!だって親でしょ。それしかないでしょ。当り前じゃないですか」。圧倒する迫力で語る寿浩さんに、迷いはまったくありません。自分がかつて親から受けた対応に、じくじたる思いがあるからこその言葉なのかも知れません。

夜間中学校への誘いを受けた寿浩さんは「ご縁だな(本人談)」と感じ、息子と一緒に学び直すことにしました。 
駿太さんは、一人でいる時が気は楽だそうです。星友館中学校に入学して、他人と交わる時間が増えました。父・寿浩さんは、駿太さんを見つめながら話します。  
 
「おじいちゃんやおばあちゃんぐらいの年の同級生から声をかけてもらったりして、会話しているんです。外国出身の人には最初、『怖いなぁ』と言っていたんですが、『話してみたら怖くなかった』と言うんです。成長してるな~と感じるんです」。

「物事を自分から率先してやるようにもなりました。ちょっとずつ成長してる」。
駿太さんは学校を休むこともありますが、無理を強いられない環境で勉強を続けています。

「意思疎通について…」

父・寿浩さんの苦手な科目は地理です。好きな科目は理科です。特に軟体動物や無脊椎動物に関心があります。

「知れば知るほど奥深いです。人間にはないものを持っているところが興味深いです」。
「生き物が他の生き物と取る意思疎通について、興味があるんです。例えば、魚と花の間に疎通はあるのだろうか?と」。

「勉強が面白くなって来た」とパソコンを操作しながら語る寿浩さんは、学校で先生やクラスメートと議論することにも楽しみを感じ始めています。

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養護担当 渡辺千鶴教諭

*養護担当 渡辺千鶴教諭

「生徒さんは年齢も経歴も多様ですから、対応もさまざまです。例えば高齢の方は健康相談をする方が多く、不登校を経験した方の中にはまじめな気質で元気が内側にこもった方もいます。そうしたそれぞれの課題を、学校だけで解決するのではなく、外の社会とつながる連携役と考えています。

例えば仕事をしている生徒さんの場合、その勤め先と連絡を取り合ったり、医療的な措置を要する方には関係機関と連携するなどして、学びやすい環境づくりを探っています。そして勉強だけでなく、他人と上手に関わって、社会に向けて表現してゆくためのライフスキルを身につけていただく授業も行っています」。

***

*注1)札幌市立星友館中学校は、入学を随時受け付けています。9月から12月までの間に受け付けの場合は来年4月入学となり、来年1月から8月までの間に受け付けの場合は来年5月から10月までの間の入学となります。詳細は同校へお問い合わせください。

◇文:HBC・油谷弘洋

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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