2023.08.19

暮らす

クマがエナジードリンクを飲んだ?オスとメス、クマと人…出没の裏にある理由は

ことし札幌では、8月15日までに、去年の約1.8倍のペースでクマが出没しています。

6月後半には南区、西区と広範囲で出没が相次ぎましたが、その多くに、「1頭のクマ」が関わっているとみられることがわかりました。

そのクマの動きは前編の記事でくわしくお伝えしましたが、この記事では、<実は過去にもあった似た事例>と、<もうひとつ注目したい札幌の出没>についてお伝えします。

連載「クマさん、ここまでよ

約15キロ範囲の出没に…1頭のクマの影

6月後半、西区や南区で相次いだクマの出没。

西野市民の森に設置した札幌市のカメラに映ったクマ(6月18日)

地図に落とし込むと、約15キロほどの距離がありますが、札幌市によると、現場に残されたDNAや足跡などから、これらはすべて同じクマだと見られています。

さらに、6月10日に小樽で調査中に見つかったクマのフンからも、同じDNAが検出されました。

クマには南区と西区、さらに市町村の区切りも関係ない…
そんな事例は、実は過去にもありました。

<過去にもあった事例>

2019年6月から、札幌・江別・北広島にまたがる野幌森林公園周辺で、クマの出没が相次ぎました。

江別市でクマの出没が確認されたのは、78年ぶり
‟異例”の事態に混乱するうちに、ハスカップ農園の被害も出て、江別市は7月に、北広島市は8月に、箱ワナを設置して駆除に乗り出しました。

ようやくクマが北広島でわなにかかったのは9月。クマ騒動は3か月にもわたりました。

その後の調査で、このクマのDNAが、その年の5月に札幌・南区の真駒内公園の出没現場に残されていたDNAと一致したのです。

真駒内は毎年のように出没がある場所。そこから「78年クマの出没がなかった」地域に移動したのです。
「あそこはいつも出るから」「ここからは遠いから」…と、油断することはできないとわかった事例でした。

ことしの札幌の出没も同様に…

2019年に北広島で駆除されたクマはオスでした。
そしてことしも、1頭のオスが小樽から札幌の広範囲を移動。

西野市民の森に設置した札幌市のカメラに映ったクマ(6月17日ごご1時ごろ)

この時期、オスはメスを探して、10キロを越える非常に広い範囲を移動します。
そして子連れのメスは、オスから逃げるために住宅地に出没することも…。

ことし札幌でこのオスのクマが出没した「西区西野」や「藻岩山」では、親子=母親と子どものクマも目撃されていました。

6月20日の藻岩山の斜面では、警察や市の職員が実際に見たのは1頭ですが、最初の通報は「4~5頭」でした。札幌市は、子連れの母親を、オスグマが追っていた可能性もあると話します。

さらに、2019年の事例をなぞるかのように、ことしも7月末から8月現在にかけて、北広島市でクマの出没が相次いでいます
北広島のクマが、小樽~札幌西区・南区を移動していたオスと同一かはまだ定かではありませんが、札幌市と北広島市は2019年の事例などの反省から、密に情報共有をして警戒を続けているということです。

札幌・北広島や周辺地域に住む市民も、ごみの管理や電気柵などクマを引き寄せないための対策をするなど、警戒が必要です。

<もうひとつ注目したい札幌の出没>

クマのオスとメスをめぐる理由だけでなく、人が関係する出没もあります。

ことし5月末から7月にかけて、親子グマの目撃が相次いだ札幌・南区北ノ沢。
母親と、3頭の子グマでした。

監視カメラに映った親子とみられる4頭(札幌市提供)

5月頭に南区中ノ沢で目撃されたクマとも、頭数と、子グマのうち1頭に白い模様があるという特徴が一致しているため、札幌市は同じ個体と見ています。
札幌市は聞き取り調査などの結果、中ノ沢では人の食べ残りのピザを、母クマが食べたと見ています。

その後は5月末から北ノ沢で出没が相次ぎますが、6月30日の調査で見つかったフンの下には、噛んだ跡が残ったエナジードリンクの缶が見つかったといいます。

そして7月8日、札幌市は、北ノ沢で1頭のクマを駆除したと発表しました。年齢7~8歳ほどのメス。出没が相次いでいた「母親」とみられています。

その10日後、18日午前9時ごろ。
残された子グマたちと見られる3頭が、北ノ沢付近で、路上に落ちていたスイカやパイナップルなどの生ごみをあさっている姿が目撃されました。

生ごみは、人が食べた後に捨てられたとみられています。

繰り返し人前に姿を現し、さらに人の食べものの味を覚えてしまった「問題個体」ということになりますが、札幌市にはこの子グマの駆除に反対する電話などが殺到しているといいます。

一方で、8月13日にも北ノ沢でクマ2頭が目撃されています。

札幌市によると、子グマは生まれたばかりではなく、まもなく親と離れて行動するようになる時期だということで、今後も警戒が必要です。

クマごとの理由と対策

クマの出没が増えると、「クマが増えているからでは」「クマを減らさないと」という意見をよく聞きます。

たしかにクマの数は、1990年からの30年間でおよそ2倍に増えています。
道はことしから人里に出没するクマを抑制するため、「春期管理捕獲」を始めました。‟積極的な駆除”とは違い、地域ごとに上限も設けて‟適正に管理”しようとする施策です。

ことしの札幌のクマの出没ペースは、去年の1.8倍ほど。
しかし一つ一つを見ていくと、背景には特定のクマがいたり、人の暮らしが関係したりしていることがわかってきます。

そのクマが住宅地に繰り返し近づくのは、なぜなのか。
メスを追いかけているのか、オスから逃げているのか、人の食べ物の味を覚えたのか、人に慣れてしまったのか…。

クマごとの出没理由に注目すると、それに応じた対策や、注意すべき時期が見えてきます。
「駆除すべき」「駆除しないべき」の議論の前に、ごみの管理など、できることもありそうです。

5月末に北ノ沢の介護老人保健施設の裏手で目撃された親子グマ(画像提供:札幌市)

北ノ沢で残されたクマたち。
西野の親子グマ。
広範囲を移動しているオスグマ。

「クマごと」の動きに注目しながら、引き続き広い範囲で、クマとの”いい距離の保ち方”を考える必要がありそうです。

札幌市は、ごみなどの管理に注意を呼びかけるほか、自治体をまたいだ情報共有や対策の連携を強化していきたいと話しています。

連載「クマさん、ここまでよ
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:Sitakke編集部IKU

※掲載の情報は取材時(2023年6月~8月18日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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