2023.07.30

暮らす

4人死亡の猟銃事故…でも北海道にはクマがいる。ハンターの想いと、“身近”な現場

長野で起きた、4人が死亡した立てこもり事件はまだ記憶に新しいところですが、凶器として使われたのが猟銃でした。

そもそも猟銃は、私たちの身近でどんな使われ方をしているのか、現場を取材しました。

連載「クマさん、ここまでよ

札幌市南区の山の入り口。
オレンジ色のベストを着た男性と作業着姿の男性が、準備に追われています。

これから、地質調査に向かうといいます。
ベストを着た2人は、北海道猟友会札幌支部のハンター。なぜ、同行するのでしょうか。

建設コンサルタント会社は、「私が下を調査しに行っているときに、斜面の上から降りてきたんですよね。クマさん。私もびっくりして、あ、クマだって」と話します。

今年、札幌の住宅街近くでも目撃が相次ぐクマ。
まして山の中となると危険度が高まるため、ハンターの護衛が必要なのです。

北海道猟友会札幌支部のハンターは、「安全にお仕事をして、安全に帰ってくることが仕事だと思っています」「危ない業務だというのは心得ていますので、覚悟はできています」と話します。

高速道路、送電線、携帯電話の基地局など、山の中には私たちの生活に欠かせないインフラが数多くあり、建設やメンテナンスにはハンターの護衛が欠かせません。

長野・中野市(5月)

今年5月、長野県中野市で、4人が殺害された「立てこもり事件」。
うち2人は、警察官。通報で駆け付けた直後、猟銃で撃たれたのです。

逮捕された無職の男は、県の公安委員会の許可を受けて、猟銃など4丁を所持。
犯行は、このうちの1丁、つまり合法的に許可された銃が使われました。

そして、この事件が、道内のハンターの活動にも影響を与えていました。

北海道猟友会札幌支部のハンターら、15人が集まりました。
見学者と一緒に、有害鳥獣の駆除に向かいます。

こちらのサクランボ農家は、カラスの食害に悩まされていました。

サクランボ農家は、「ハンターさんが来たら嫌がる人もいるっていうけど、私はすごく助かってます。上手なもんですもんね。うちは助かっている」と話します。

散弾銃で、果樹園の上空に飛んでくるカラスを追い払います。

農業被害を防ぐためには、こうした人たちの力が欠かせません。

その一方で、銃を使った事件が繰り返されている現実もあります。

2007年、長崎県佐世保市のスポーツクラブで、2人が死亡する銃乱射事件が発生。
再発防止策として銃刀法が改正され、所持の許可の申請や更新の際、医師による診断書の添付が義務付けられました。

しかし、去年1月、埼玉県ふじみ野市で、医師が散弾銃で殺害された事件では、被告の男の診断書は歯止めにならず、再発防止策が必ずしも功を奏しているとはいえませんでした。

猟友会札幌支部の奥田邦博支部長は、そんな中で起きた長野の事件の影響を心配します。
「ハンターを目指す子が出てきて、これから技能教習(=射撃試験)といったときに、警察はその人の精神状態が正常か否かを医師の診断書で判断する。『その段階で精神科に行ったら断られた、ほかに病院があるか』という問い合わせを受けた。新規の診断は受け付けいないと断られた」

事件後、札幌市で、新たに銃を所持しようとする人が、医師に診断を断られる例があったというのです。

奥田支部長は、万一の場合、医師が責任が取れないと考えたためではないかと話します。

「農家さんであったり、仲間であったり、密にコミュニケーションをとっていれば、長野の事件みたいなことは起きないはず。猟友会を『鉄砲を持って危ない集団』と見ている人も、そういう活動を見てもらって、弾を入れなければ危なくないので、みんなちゃんとルールを守って社会貢献をして、困っている農家さんに寄り添ってやっているのをわかってもらいたい」

猟銃の規制と活用のバランスをどう取るか。
今回の事件で、重い課題が浮き彫りになっています。

警察庁などによりますと、2021年現在、全国で猟銃や空気銃を持つ人は、およそ8万8千人。
一方、猟銃の数は、およそ15万4千丁にのぼります。

最近は、ジビエ料理ブームや狩猟をテーマにした人気漫画の影響もあって、趣味で狩猟をする若者が増えているといいます。

今後は、許可された銃でも犯罪に使われるおそれがあることを前提に、猟銃の保管場所や人の横のつながりを深めるなど、犯罪をゼロに近づけていく努力が必要です。

札幌・南区白川の果樹園の近くに現れたクマ。このときもハンターが警戒にかけつけた(2023年3月)

連載「クマさん、ここまでよ
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年7月19日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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