子どもとの生活は楽しいことがたくさん。でも、お互いにイライラして「しんどいなぁ」と感じることもたくさん。子どもがイライラしてあたってくると、親もイライラ。「どう対処したらいいんだろう」と悩みつつ、感情的にぶつかりあって嫌な思いのまま眠りにつく……そんなこともあるのではないでしょうか?
今回は公認心理師である筆者が、子どもの怒りに困ったとき、親も子どもも少し楽になる考え方をお伝えします。
日々やることがたくさんある現代人。親も子もやるべきことに追われる日々です。さらに、やりたいことも盛りだくさん。ついついやるべきことを後回しにして遊んでばかり。そんな子どもに「もうゲームはやめて、勉強しなさい!」と声をかけたら、「今やろうと思ってたのに、やる気なくなった」とイライラされてしまうこと、ありませんか?
親としては、ずっと「いつやるんだろうか」とモヤモヤした気持ちを抱え、そこそこ長い時間耐えて声がけしたつもりなのに、逆にイライラをぶつけられたら、たまったものではありません。
こういうときは、モヤモヤと我慢する時間が長くならないように、先に子どもの予定を確認し、子ども自身に予定を決めさせるようにしましょう。「何時になったら宿題する予定なのか、教えてもらえると安心だから、予定教えておいて」とあらかじめ決めるようにしてみるのです。
許容範囲を超えるような時間を提示してきた場合は、その時点で「それは〇〇という理由で無理だと思う。〇〇時までには終わっているようにしてほしいから、もう一度始める時間を考えてみて」と提案し、現実的な範囲内で子どもが予定を決めるような声がけをしてみましょう。
最初はうまくいかなくても、少しずつできるようになっていきます。そして自分で決めたことなので、渋々でもがんばってくれることが多いものです。
「これ買って!」とお店でダダをこねられると、つい買い与えてその場を何とかおさめたくなってしまいます。でも、これはダダをこねると思い通りになるという間違った学習をさせてしまうことにつながります(問題行動を強化してしまうと言います)。怒ったら、大きな声で言ったら、暴力をふるったら、思い通りの結果が手に入ると学んでしまうと、その子どもは間違った方法を使って自分の希望を通そうとする人間になってしまいます。
「これ買って」とダダをこねられたとき、泣き止ませることを目的に買い与えたくなる気持ちは自然なことです。でも、それは子どものためにも、そして親のためにもなりません。「どんなに大声で泣き叫んでも、今日それを買うことはできないよ」と伝えましょう。
欲しい気持ちに寄り添うことは大事なことです。「どうしてそれが欲しいのか教えて。買うか買わないかはこちらが決めるけれど、あなたの気持ちは知りたいから」と聞いてみましょう。“ダダをこねても買い与えることは絶対しない”というところはぶれないように。
理由を聞いて、親が納得し必要だと思ったときには、「きちんと言葉で伝えてくれたから、どうして必要なのかわかった。だから買うことにする」と伝え、買いましょう。
自分の気持ちや想いをきちんと相手に伝えるためには、自分の気持ちを表す言葉を学ぶ必要があります。子どもが感じているものを、言葉にして表す(言語化する)お手伝いをしつづけることが、実は子どもの怒りをおだやかにする一番大事な方法かもしれません。
「もういいもん!」と子どもがふてくされてしまったとき、あなたはどうしていますか? 「勝手にしなさい!」とさらに怒って子どもを責めてしまうことはありませんか?
わかってもらえないさみしさや、焦り、不安などが積み重なり、人は怒ります。それは大人も子どもも同じこと。子どもはまだまだ自分の気持ちを言語化することが難しいのです。だから、言語化するお手伝いをしてあげることで、子どもは自分の気持ちを一生懸命に伝えるようになりますし、わかってもらえたという安心感が積み重なれば、イライラすることは少なくなります。
「もういいもん!っていうのは、今は話したくないっていうこと?」「お母さんの言った言葉に対して嫌な気持ちになったのか教えてほしい」などの声がけをしてみましょう。「今は話したくないのなら、少し落ち着いて、自分が何が嫌だったのか、どうしてほしかったのかわかったら教えてね」というのも良いです。子どもなりに何らかの形で説明してくると思います。
そうしたら「それは悲しかったっていうことかな?」「そういうときは、“その言葉は言ってほしくなかった、傷ついた”って言ってくれたら、お母さんもわかりやすくて、次から気をつけられるよ」などのように、子どもに言葉の使い方、表現の仕方を教えていきましょう。
生きていれば、イライラして感情的になることはあります。大人も子どもも同じです。すべてをコントロールすることはできません。特に思春期には、理由なくモヤモヤして、周囲に当たり散らすことが多いものです。
ただ、子どもがいつもよりもイライラしやすいなというときは、もしかしたら、その背景に何か悩みが隠れている可能性もあります。いつもならイライラしないのにな……という場面でイライラすることが続いたら、「最近悩んでいることはないかな?」と声がけしてみましょう。
無理に聞き出す必要はありませんが、何となくいつもと違う様子を心配しているよというメッセージを伝えておくことで、子どもは「自分のことをきちんと見てくれている」という安心感をもつことができます。
子どもがイライラしているとき、大事なことは巻き込まれないことです。「自分が何かしたのかな?」と不安になる必要はありません。イライラしている子どもを観察し、一定の距離をもって見つめてみましょう。イライラは子どもの感情です。子ども自身が対処すべきものです。親が何とかするのではなく、子どもがうまくつきあっていけるような方法を見つけていけるよう声がけしていけるといいですね。
とはいえ、感情的になっている子どもに何を言ってもダメなときはダメなので……そういうときは少し離れて、落ち着くまでそっとしておくことも大事です。少し落ち着いてから、話ができたらいいですね。
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文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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【ライター:竹原久美子 PROFILE】
中学時代、寄り添ってくれる人の大切さを感じ、心に寄り添う仕事につくことを決める。
「人生の始まる現場で学びたい」と産婦人科での実習を希望し、そのまま、産婦人科で女性の心に寄り添い続けてもうすぐ20年。
土地柄を肌で知っていることは心の理解にも役立つという想いで、地元札幌で臨床に携わり続けている。
【画像】プラナ、kou、タカス、Ushico / PIXTA(ピクスタ)
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