避難所の室温は2度。
床は、ブルーシートの上に、毛布が1枚。
暴風雪での立往生を想定した、車の中は…?
厳しい寒さを伴う災害。
身をもって体験し、備えようとする人たちがいました。
1月、北見の日本(にほん)赤十字北海道看護大学で行われた、災害演習。
真冬に、停電を伴う災害が起きたという想定です。
自治体や医療関係者など、およそ100人が参加し、避難所の運営や避難生活を体験しました。
避難所で必要になる段ボールベッド。
小さい段ボールを大きな段ボールに入れて、強度を高め、寝床にします。
最新のワンタッチ式は、およそ2分で、あっという間に、完成しました。
このベッドの上に寝ると、床で寝るよりも10度ほど体感が違うそうです。
冬場、床で雑魚寝をすると、体温が奪われます。
保温性に優れる段ボールベッドは、なくてはならない重要な品です。
体験した人は、「ちょっと上にあがるだけで温かい。足音とか響かないのもいい」と話していました。
寝床はパーティションで囲まれ、個室のようになりました。
真冬の災害で、懸念される問題に「低体温症による死亡」があります。
服を濡れたままにしない、保温できる資材を使うなどの予防が必要です。
真冬には、配給する食べ物が凍ってしまうなど、食事の問題も深刻となります。
停電の中、有効なのが、キッチンカー。
夕食は、レトルトの牛丼が、簡単なアレンジを加えて出されました。
体が温まるよう、ショウガやジャガイモ、北見のタマネギなどを加え、仕上げました。
とろみをつめて、冷めづらくしています。
体験した人からも、「体も温まって、食事プラス気分的にもほっとする」と好評でした。
午後9時。気温はマイナス12℃、寒くなってきました。
HBC堀内大輝アナウンサーは、暴風雪の中、車が立ち往生した想定で、1時間、車の中で過ごす体験をしました。
車の中にいると、下半身がどんどん冷えて行くという実感があります。
車のエンジンをかけたまま、車内で過ごすと、降り積もる雪でマフラーが埋もれて、一酸化炭素中毒になるおそれがあります。
寒さ対策をしっかりして、エンジンを切ることが大事だといいます。
体験した人は、「最後のほう鼻から息をしたら、鼻がくっつくレベルだったので、マイナス10度は下回っている」と話していました。
車の中では、エコノミークラス症候群や低体温症にも、注意しなければなりません。
水分補給やトイレ、そしてマッサージなど、適度な運動も大切になってきます。
停電の中、効率よく暖を取るアイディアとして、雪を集めて、お湯を沸かし、足湯を作る方法があります。
ビニールで覆った段ボール箱に、ビニールをはいた足を入れ、沸かしたお湯をかければ、「濡れない足湯」となります。
低体温症を防ぐために、汗をかかない、濡れないことも、大切なポイントです。
テントの中では、ストーブの上に置いた石に、水をかけて蒸気を発生させる即席の「ロウリュ」も。
冷え込んだ体の、血流を促進させる効果があります。
暑すぎると汗をかいてしまうので、40℃以上にならないようにします。
寒冷地にある北ヨーロッパの知恵も取り入れ、命を守ろうとしています。
午前7時。
避難所での長く寒い夜が、明けました。
堀内アナウンサーにとっては、初めて寝袋の中で、冬の一夜を過ごした体験でした。
「枕が無かったので、首が痛くて2時間に1回、目が覚めてしまった」といいます。
コロナ禍で、3年ぶりの開催となった、厳冬期の災害演習。
道内では、日本海溝・千島海溝沿いで、巨大地震の発生が「切迫している」と指摘されていて、避難所の備えや課題の洗い出しは、待ったなしの状況です。
日本赤十字北海道看護大学・根本昌宏教授は、「避難生活を考えると、これが冬となった場合には、ここはしっかり学ばないと、間違った行動で、命を失うということが起こると思います」と話していました。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は放送時(2023年1月23日)の情報に基づきます。
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